第31話 Sanction 3
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のだ。
「ふざけ……」
「おっと、拒否権はないぜ?お前さんがやらなければ、あの二人は死ぬぜ?」
「……なら、なんでピアノなんだよ。」
自分はピアノなどまともに弾いたことはない。あるとしても、まだ小さい頃にカズハが弾いているのを見様見真似で弄ったくらいだ。そんなこと、こいつならば分かっているはずなのに。
「あるだろ?取って置きの一曲が。」
カズトは答えない。いや、答えられない。この小鬼が、どうしてアレのことを知っているのだ?などと、的はずれな疑問が脳内を駆け巡っていた。知っているのは当たり前なのに。自分の中にいるのならば、知っていて当然なのに。
「……分かった。」
何も分かっていないのに、そう言って、ピアノへと歩いていった……
サテライザーの動きは明らかに異質だった。先ほどまでの単調な動きなのには変わりない。だと言うのに、その刃のキレは段違いに跳ね上がっている。一撃一撃が重く、鋭い必殺といっても良いものだ。
対してラナの方は、立ち上がりクレオと再び戦闘を開始していた。
クレオの拳は先ほどと打って変わって一撃も当たらず、逆にラナの拳の方が当たり始めていた。
カズトはピアノを弾く。それは、白と黒が逆転した奇妙なピアノだった。ゆっくりと指を起き、力強く弾き始める。
サテライザーに意識はほとんど無い。あるのは、負けてはならないという脅迫観念と、耳に微かに聞こえてくるピアノの音だけだ。
それに導かれるように、ただひたすら前に進むだけだ。
ラナには意識があった。だが、体はまるで自分のものでは無いかのように動く。拳は重く響き、その蹴りは鋭く敵を切る。まるで、耳に届くピアノの音が自分を強くしているようだ。
カズトの曲は、カズハが好んで弾いていた物。喜びと悲しみに分けられた曲の中で、いつも悲しみの方を弾いていた。
いつか、どうして喜びを弾かないのかと、訪ねたことがあった。
その時あの人は……なんと答えたのだったろうか……?
サテライザーとラナ。耳に響くピアノの曲が、クライマックスに入ると同時に、背中の聖痕から、羽が生えた。
あまりに突然。何かに呼応するかのようなその姿は、愚かな人間を見下す天使のようだった……
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