第5部 トリスタニアの休日
第5話 運命の密会
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いられませんわ」
「どこへ行く気だ?」
「街を出るわけではありません。とりあえず着替えたいのですが……」
アンリエッタはローブの下のドレスを見つめた。
白い、清楚で上品なつくりのドレスだが、ローブに隠れるとはいえいかにもめ目立つ。
高貴の者がそこにいると訴えているようなものだ。
「ルイズ用の服なら用意してあるが」
「それを貸してくださいな」
ウルキオラはベッドのそばの箱をあさり、ルイズのために用意しておいた予備の服を取り出した。
それをアンリエッタめがけて投げる。
華麗にキャッチしたアンリエッタは後ろを向くと、ウルキオラの目を気にせずに、がばっとドレスを脱ぎ捨てた。
ちらっと背中越しにアンリエッタの胸が見えた。
それをウルキオラは表情を変えずに見つめる。
そこである疑問が生まれる。
ルイズの服を着れるのだろうか?
やはりそうだったらしい。
「シャツが……、ちょっと小さいですわね」
「あたりまえだ。ルイズのために買ったんだからな」
アンリエッタの胸は収まらず、ボタンが飛んでしまいそうなほどに、ぴちぴちに張りつめている。
「無理があったな」
「まあ、いいですわ」
「お前がいいならそれでいい」
「行きましょう」
アンリエッタはウルキオラを促す。
「アホか」
ウルキオラは短く言った。
「髪型くらい変えろ」
「……そうですわね、さすがにこれではばれてしまうかもしれません」
そういってアンリエッタは後ろでポニーテイルのかたちにまとめあげた。
そうすると、ずいぶんと雰囲気が変わった。
「ふふ、これなら、街女に見えますわね」
胸の開いたシャツを着て、髪型を変えると、確かに陽気な街女に見えないこともない。
ウルキオラとアンリエッタは、何食わぬ顔で宿屋の正面から路地に回る。
辺りは女王の失踪でどうやら厳戒態勢が引かれているらしく……。チクトンネ街の出口には、衛兵が通りを行く人々を改めていた。
「お前を探しているようだな」
「私の肩に手を回して」
ウルキオラは言われたとおりにアンリエッタの肩を抱いた。
衛兵がいる場所に近づく。
アンリエッタは肩を抱いたウルキオラの手を握り、開いたシャツの隙間に導いた。
アンリエッタの滑らかでやわらかい丘の感触が、ウルキオラの指をつたう。
だが、それ以上の感情は芽生えなかった。
ちらっと衛兵は二人を見たが……、所詮、女王の顔など遠巻きにしか見たことのない下っ端である。
よもや女王が剣士の男と腕を組み、その手に肌を許すなどとは夢にも思わないようである。
すぐに目を逸らし、別の女を呼び止める。
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