第155話 ?越
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化させたことを喜んでいた。彼女は孫堅が正宗に恨みを抱き、今後禍根となる自体を避けたかったのだろう。
孫堅には荊州刺史・王叡殺害の前科がある。王叡殺害は武陵太守・曹寅にそそのかされたとはいえ、孫堅は王叡に個人的な恨みを抱いていた。
孫堅の王叡に対する恨みは王叡が孫堅を見下していたからである。その理由は孫堅の若かりし頃にまで遡る。
孫堅はお世辞にも良い生まれではない。生まれつき剛気な性格であった孫堅は軽侠(無頼の強盗)にて名を馳せる。彼女は軽侠ではあったが優れた武芸の腕と並外れた胆力を買われ地方の下級役人に抜擢される。しかし、彼女は役人になっても軽侠から水を洗うことはなかった。その軽侠稼業で蓄えた財で徐々に兵を養い軍閥を編成していった。
その後、長沙郡の太守になってからも周辺の郡境を越えるという太守の禁を犯し山賊・夜盗を襲撃しては彼らが蓄えた財を強奪し横領した。そして彼女に従属することを誓った山賊達を兵士に組み込みより軍を肥大化させていった。孫堅が劉表や名士層に嫌われる所以がここにあった。また、市井の者達も孫堅を恐れるのも無理からぬものがあった。
正宗は荊州の民と違う点で孫家を嫌っていたが紫苑がそのことを知る訳もなく、正宗が孫堅の風聞を聞きつけ孫堅を嫌っていると勘違いしているように見えた。泉は正宗から孫家を嫌う理由を告白されているので正宗がおいそれと考えを翻すものだろうかという表情だった。
紫苑は正宗が孫堅に対して態度を軟化したことで問題が大きくならずに済みそうだと思っているのか安堵していた。
正宗達三人は屋敷に着くと別れた。紫苑は娘の璃々に手料理を作る約束をしていると言い、そそくさと正宗と泉を残して去っていた。正宗と泉は紫苑の後姿を見送ると踵を返し正宗の部屋の方に向かっていった。
「正宗様、孫文台を本当にお許しになられるおつもりなのですか?」
泉は周囲を気にしながら正宗に囁いた。
「許すしかないだろう。私の面子と私の兵の命を天秤にかけるまでもない。蔡瑁を殺すのに私の兵士を無駄に死なせる訳にはいかない」
正宗は視線を少し落とし泉に答えた。泉は正宗の言葉に何も言わなかった。
「孫文台が粗暴な者であることは承知していたこと。私もまだまだ若いということだ」
「孫文台の非礼を考えれば致し方無いと思います。特に正宗様を弓で狙った女は万死に値します」
泉は正宗を擁護するように言った。
「私は孫堅と孫策の存在が気がかりでならない」
正宗は深刻そうな物憂げな表情を浮かべた。
「美羽様のことでございますか?」
正宗は軽く頷いた。
「美羽に孫堅と孫策を御することが出来ると思うか?」
「分かりません。しかし、美羽様は民の負担を慮り過ぎて兵を養うことを最小限に留めているように
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