響ノ章
警備隊
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
連れ立って駆けていった。
◇
提督室の扉を開ける。照明の落とされた室内は暗かったが、何とか窓から入る月明かりのお陰で探しものは見つけられた。大きくて分厚い、写真帖のようなものだ。これは、もし有事の際に提督から持ち出すように言われていたものである。そうして可能ならば彼の従兄弟に渡すようにとも。中身は見ないように言われている。そうして、事故でも見ることがないようにか、それは紐によって結ばれていた。
私はそれをかかえて響ちゃんの元へ向かおうとした時に、壁にかかっている提督の上着を見つけた。響ちゃんに上衣を渡してしまったので上はさらし姿だ。私は心のなかで一言提督に謝ってから、その上着を着て提督室を後にした。
廊下を駆け、階段を駆け下りる。そうして室外へ出た時、それは視界内に入った。深海棲鬼の重巡洋艦。よもや、上陸しているとは。
驚き後ずさった足音に気づいたか、重巡洋艦はこちらを向いた。
「あっ……」
僅かに声が漏れる。彼我は五間もない。静かに、私と重巡洋艦は対峙した。向こうは重武装。其れに比べて、こちらにあるのは写真帖のみ。ゆっくりと、重巡洋艦は主砲を持ち上げて此方へ向けた。酷く現実感が欠落していているこの状況に、私は判断が一瞬遅れた。
踵を返すが、間に合わない。そう思った矢先に側から走りだした誰かの足音を聞いた。
砲撃音。砲弾は、私には当たらず側の地面に落ちた。それと同時に、後手で何かが倒れる音を聞いた。振り返れば、警備隊の者が重巡洋艦を押し倒していた。そうしてそれに続くように、物陰から殺到する数人の影。手には、銃。
最初に押し倒した人を弾き飛ばし、立ち上がろうとする重巡洋艦に、影は近づき容赦なくその銃を突き刺しにかかる。
「ギアアアアアアアアアアアアアアアア!」
叫ぶ重巡洋艦。幾人かの銃を払い、装甲で防いだものの何人かの銃はその体を刺していた。刺していた? よく見れば、その中の先には銃剣がついていた。警備隊は、元より近接戦闘をするつもりだったのか。
負傷を負いつつも立ち上がろうとする重巡洋艦を、銃を捨てた何人かが押し付ける。それでも重巡洋艦は止まらずに立ち上がりかける。そうすると残る影は銃を捨て重巡洋艦に体当たりし彼らもまた抑えつける。
拮抗状態となりかけたが、初めに弾き飛ばされた人が起き上がり、捨てられた一丁を手に、押さえつけられた重巡洋艦の元へと向かった。
そうして、重巡洋艦を見た彼は、顔を歪ませた。私の目から見ても、その理由は明らかだった。重巡洋艦の銃剣がささったままの腹部の損傷が激しい。仮に、今から治療行為を行おうとも、本格的な医療担当員が居なければ死ぬしか無い。重巡洋艦も叫ぶのをやめたのはそのせいだ。彼は刺さったままの銃剣を抜いて捨てる。
「重
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ