39部分:第三十九章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第三十九章
「そうか、あの医者がそうだったのか」
老人は次の日ようやく屋敷に帰って来れた。そして野島と共に二人の話を聞いていた。
「まさか女だったとはな」
「しかも彼女の孫娘だったとは」
野島も口を開いて述べる。二人にとってもこれは思わぬことであったのだ。
「私もまさかとは思いましたがね」
それに速水が答える。四人は今家の門にいた。見送りであったのだ。
「ですが間違いないです」
「あれだけの魔力の持ち主ともなると」
「だろうな」
「御前の介入さえ阻みましたから」
「わしも老いたかな」
老人は寂しげな苦笑いを浮かべて一言述べた。
「かってはその彼女の祖母とも何度か渡り合ったのだが」
「いえ、彼女は」
速水が言う。
「彼女の祖母よりも遥かに強力です」
「魔人そのものですね」
「魔人か」
老人はそれを聞いて少し遠い目になった。
「かってはわしもその祖母もそう呼ばれておったか」
「若き日ですか」
「そうじゃ。懐かしいな」
「御前、その懐かしき日々は」
「うむ、今思っても仕方ないな」
老人は野島に言葉を返した。
「今ここで言ってもな」
「それで事件は解決したのですね」
「ええ、とりあえずは」
今度は沙耶香が答えた。
「何とかですが」
「左様ですか」
「しかし彼女は」
「いえ、それはまずはいいです」
野島はその整った目に口惜しさを含ませた沙耶香に対して言った。
「魔界を退けただけでも」
「そう言って頂き感謝します」
「御礼はそれぞれの口座に振り込んでおきますので」
「ええ」
「ではまた」
「はい」
「それでは」
沙耶香と速水がそれぞれ挨拶をした。二人は完全には納得はしていなかったがそれでも挨拶は交えたのであった。
「そして二人共これからどうするつもりなのじゃ」
「これからですか」
沙耶香は老人の言葉を耳にするとすっとあの妖しい笑みを浮かべた。
「まずは魔都で。宴を楽しむとします」
「ふむ、いつもの様にじゃな」
「はい。そしてまた話が来れば」
「動くのか」
「私は本業をしてきます」
「御主もいつも通りじゃな」
「ですね」
「ではまたそれぞれの場所に戻って」
「御前もまた」
「何、わしのことは気にすることはない」
彼は沙耶香の言葉にからからと笑った。
「わしはもう老い先短い。ここで楽しくやっていく」
「左様ですか」
「孫達の成長を眺めながらな」
「しかし御前」
速水はにこりと笑って彼に声をかけてきた。
「何じゃ?」
「私の占いでは御前はまだまだ長生きされますよ」
「ほう」
「そして。そうそう平穏には日々を送れそうにもありません」
「また嫌なことを言うのう」
「私が言ったのではありません。カードがそう示したので
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ