第25話
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や私達は、張角の首以上の物を手に入れただけだ」
「それが…………例の朗報?」
そうだ、と周瑜は頷く、そして持ってきていた書物を孫策に差し出した。
「恐らくこれが、袁紹の真の目的だった物だ」
「真の……目的……」
その言葉に首を傾げる孫策、無理も無い。袁紹はあの地において十五万の人員と、それを扇動したとされる三人を手に入れたのだ。それ以上の物などあるだろうか、孫策で無くとも思うところである。
そんな彼女の様子に周瑜は笑みを浮かべ、口を開いた。
「これは――太平要術の書だ」
「ッ!?」
『太平要術の書』武に傾倒している孫策でもその存在は知っている。
読む者の必要としている知識を与えるとされる妖書、世の賢人達が渇望して止まない書物である。
「袁紹の目的は始めから『これ』だったのだろう。残念ながら、『これ』を持っているはずの張三姉妹は手ぶらだが」
今頃、奴は歯軋りしているに違いない。――周瑜は愉快そうに笑い声を上げる。
張三姉妹こそが真の張角だと確信していた甘寧に抜けは無い。彼女は周瑜に報告する前に件の屋敷を調査。手掛かりが残っていないか調べていた。
そして見つけた。一際高級そうな布に包まれている書物を。
「そして私は、これが本物かどうか確かめたのだよ……それが朗報だ」
「ま、まさか」
「そのまさかだ。これは本物だよ雪蓮……孫呉の独立は成るぞ、それもこの荊州でな!」
「な!?」
既に幾度目かわからない驚きの声を上げる。それもそのはず。荊州での独立は不可能だと断言した本人が、それを成せると豪語したのだ。
「袁紹がいる限り不可能……それが冥琳、貴方と――穏が弾き出した答えのはずよ」
もう一人の孫呉の知、陸遜――真名を穏。孫呉随一の頭脳とされる二人の意見が合致した答えなのだ。いくら太平要術の書と言えどそれを覆すのは――二人を良く知る孫策は未だ信じられない。
「私を信じろ雪蓮、この書物には独立への『確実』な道筋が記されている。あの袁紹を封じる手立てもな……フフッ、フフフ」
「……」
頬を上気させながら語る周瑜、恐らく彼女の頭の中には、独立した孫呉の姿が映っているのだろう。
そんな彼女の様子に孫策は何か危ういものを感じた。しかし彼女はそれを指摘しない。指摘できない。
幼い頃から共に在った親友。もはや半身と言っても過言ではない存在、孫策の良く知る彼女は、何の確信も無く大言を吐く様な愚か者ではない。それに―――独立は孫呉全体の目標でもある。
やがて、太平要術の書に記されていた『道筋』を周瑜は嬉しそうに語りだす。
孫策は黙ってそれに耳を傾けた。胸中に小さなしこりを残しながら――
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