第25話
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情報に周瑜は眉間にしわを寄せていた。
袁紹達が内部に乗り込む事に躍起になっていた事、旅芸人を保護し早々に陣中に引き返した事、彼女の報告を信じるなら辻褄が合う。証拠は無いが、己の勘働きに命を易々と賭けられる様な者ではない。戦場にあって、その経験則から確信に近い勘を得ているのだ。
「それから、これを」
「――これは!?」
最終的に周瑜は甘寧の言葉を信じ。『張角』の御首級を袁術達に押し付けた。
「――と、言うわけだ」
「ちょっと色々待ちなさい!」
まだ続きがあるのだが……と周瑜は相方に目を向ける。其処には今にでも掴み掛かってきそうな孫策の姿。彼女の立場からしたら聞きたいことが山ほどあるだろう。それを含めて説明するはずだったのだが……
周瑜は小さな溜息を吐き姿勢を正す。無視して進めるという手もあったが、それで血走った目つきの孫策に掴みかかられでもしたら、ひとたまりも無い。無難に質問を聞くことにした。
「……何故私に言わなかったのかしら?」
「敵を騙す前に、味方を騙す必要があっただけだ」
実質、袁術軍の全権を担っている張勲、彼女はおっとりした見た目や言動に反し。恐ろしいほどに狡猾で用心深い。もしも、『張角』の首を何の波乱も無く手に入れたとしたら……彼女は孫策達を疑い。監視の目を強化するだろう。
そうさせないためにも孫策に憤怒してもらった。彼女が張勲の手の者に刃を振り下ろした時は肝が冷えたが――おかげで疑われずに済んだはずだ。
そしてダメ押しと言わんばかりに、袁術の屋敷に孫策が乗り込むことを黙認した。
実際に目の前で激怒している孫策の様子に、張勲は満足しただろう。今頃は自分の思い通りに事が運び、孫呉を手玉に取ったことを嗤っているに違いない。
「雪蓮……お前の芝居では、あの女狐目は誤魔化せない。本気の怒気を見せてやる必要があったのだ」
「むむむ……確かに私は芝居なんて苦手よ、だからと言って今回はあんまりじゃない?」
「確かにな、だがそれに見合う朗報があるぞ」
「朗報? ……張勲が偽の首を挙げたと報告して、朝廷に罰せさせるとか?」
「悪いがそれは無理だ」
「なんでよ!!」
既に張角は討たれたものとして大陸全土に広まっている。それと同時に黄巾の活動も比較的小規模なものになってきた。そんな中、張角は別にいるなどと報告した所で聞き入れられるわけが無い。たとえその証拠を得たとしても、それごと闇に葬られるのが落ちである。
「ちょっと待って、それなら当初の予定通り、私達が手柄を挙げても同じじゃない!?」
「ほう、そこに気がつくか……成長したな雪蓮」
「誤魔化さないで!!」
「なにも誤魔化してはいないさ、私は……い
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