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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十二話 混迷
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が常識だろう! 汗をかいてもいないのにハンカチで顔を拭くな! 鬱陶しい!

「現在反乱軍領内に侵攻している帝国軍は優位に戦闘を進めています」
「うむ」
「しかし問題が無いわけでも有りません。当初の予定ではイゼルローン方面、フェザーン方面において反乱軍に対して大きな損害を与える予定でしたが失敗しました。反乱軍は多少の損害を出しつつも後退して戦線を立て直そうとしています」
「うむ、面白く無い事態だ。反乱軍が逃げるのが早すぎたな」

会議室に笑い声が上がった。阿呆、連中はこちらの狙いを読み取ったのだぞ、喜べる状況ではあるまい。
「この状況は面白くは有りません。我々は何処かで反乱軍に一撃を与える必要が有ります。このままではハイネセン攻略にも支障が出るでしょう」
「それでこの作戦計画書を作ったか」
ラインベルガーがバツの悪そうな表情をした。

「いえ、この作戦計画書はヴァレンシュタイン司令長官より送られてきました。反乱軍はバーラト星域を目指すイゼルローン方面軍を何とか食い止めようとする筈、それを上手く利用したいと。この作戦の実施が可能か、それと実施するのであれば作戦全体の制御を統帥本部に委任する事が可能かを検討して貰いたいとの事です」
「なるほど」

要するにヴァレンシュタインも最初の作戦案はもう成り立たないと見たわけか。それで新たな作戦案を提案してきた。本来ならこちらがやる仕事だな。いや、やろうとしたらヴァレンシュタインが先に送って来た、そんなところかもしれん。
「スクリーンに星系図を出せ」
「はっ」
ツィンマーマン大佐がスクリーンに星系図を表示させる。星系図には帝国軍と反乱軍の大凡の位置が分かる様になっていた。ラインベルガーは何時の間にか席に座っている。作戦の内容は説明せんのか、腹立たしい奴だ……。

ヴァレンシュタインの送ってきた作戦計画書はそれほど厚みの有るものでは無かった。幾つかの星系名が記されている。スクリーンと照らし合わせてみた。なるほど、作戦も難しいものではないな。説明を受けるまでも無いか……。問題はタイミングだな、それで制御をこちらにと言ってきたか。あとは行方のはっきりしない一個艦隊……。

「それで、如何なのだ?」
私が問い掛けると皆が顔を見合わせた。押し付け合いか? 怒鳴り付けようかと思った時、一人の男が立ちあがった。ブラウラー大佐、元はリッテンハイム侯の所に居た男だな。

「現状では極めて合理的な作戦だと思います。反乱軍がこちらの陽動に引っかかる可能性は高いでしょう。その分だけハイネセンの攻略は容易になります」
「行方の分からん艦隊が有るが大丈夫か? 指揮官はヤン・ウェンリーだぞ」
「その艦隊も引き摺り出せます。引き摺り出してしまえば恐ろしくは有りません。多少手強くても一個艦隊です」


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