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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十二話 混迷
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百億から百五十億……、溜息が出た。
『この半年間にフェザーンで取引された金を調べました。丁度帝国と反乱軍の関係が怪しくなってきた時です。多くの人間が金を購入しています。かなりの高値で取引されている。金以外にもプラチナ、銀を売った痕跡が有ります』
「なるほど、自治領主府内の協力者は誰だ?」
ボイムラー准将が首を横に振った。
『未だ分かりません。捜査中です』
「ルビンスキーは当然だがペイワードが協力者の可能性は?」
『……』
驚いた様な表情は無い。ボイムラー准将も俺と同じ事を考えている。ならば捜査に抜けは無いか。
「ルビンスキーは未だ姿を現さない様だが」
『探しますか?』
「いや、その必要は無い。いずれは現れるのだ、それを待とう」
『小官もそれが宜しいかと思います』
下手に探せば用心させるだけだ。むしろ探さない方がルビンスキーにとっては屈辱だろう。自分から接触して来る筈だ。
「地球教だがド・ヴィリエを拘束した事で脅威はかなり減ったと思うが?」
『はい、核になる人物を失った以上脅威はかなり減ったと思います。そしてこの戦争で勝てば帝国の覇権が確立します。そうなれば自然消滅という事も有り得るでしょう。しかしそれには時間がかかると思います』
「そうだな」
つまり小規模なテロ活動が続く可能性が有るという事だ。フェザーン遷都を考えれば決して喜べることではない。
「ボイムラー准将、地球教の残党を優先して追ってくれ」
『小官もそのつもりでいました。進展が有りましたら御報告します』
「頼む」
やれやれだな、通信が終り何も映さなくなったスクリーンを見ながら思った。戦況は優勢だが未だ決定的とは言えない。フェザーンの状況も同様だ。何処か中途半端で混沌としている。消化不良にでもなりそうな気分だ……。
宇宙暦 799年 3月 22日 ダゴン星域 第十五艦隊旗艦デュオメデス ラルフ・カールセン
「索敵部隊から連絡です。帝国軍はダゴン星域に近付きつつあるとの事です。我々とは約一日の距離に有ります」
オペレーターの声が艦橋に響いた。艦橋に敵発見による興奮は無い。イゼルローン要塞を撤退後は四六時中帝国軍を監視しているのだ、無理もない。
「兵力は確認出来るか?」
ビューフォート参謀長の問い掛けにオペレーターが首を横に振ると参謀長が不満そうに唸り声を上げた。
「まあ難しいだろう」
「閣下」
「先頭の艦隊に接触するだけで精一杯だろうな。無理をすれば帝国軍の攻撃を受ける。そんな危険を冒す必要は無い、敵が近付いているという情報だけで十分だ」
「はあ」
ビューフォート参謀長が不得要領に頷く。
「思ったより帝国軍の動きが早い。イゼルローン要塞で多少の休息を入れるかと思ったが……」
「補給等
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