35部分:第三十五章
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第三十五章
「黒は何かしら」
「!?まさか」
依子はそれを言われてようやく気付いた。
「そうよ、黒は水」
「くっ、五行思想の」
「それはわかっていると思っていたけれど。生贄にも使ったのだし」
黒は五行思想では水を表わす。従ってこの黒い蝶達は水の属性を持つのだ。水は火を打ち消す。即ち。依子の炎は全て沙耶香の蝶に打ち消されてしまったのである。
沙耶香に襲い掛かった全ての炎が消えた。それで依子が出してきた炎は全て消えたのであった。
「迂闊だったわ、確かに」
それは依子自身も認めた。
「ここで水の蝶を使ってくるなんて」
「奇麗だったでしょ」
その言葉に沙耶香は妖艶に笑って返した。
「黒い蝶も」
「ええ、確かにね」
依子も認めた。無論面白くはなかったが。
「それで炎は全部消してあげたわ」
「そうね、けれど」
当然それで諦めるような依子ではなかった。
「これで終わりとは思っていないでしょうね」
「当然よ。次は何かしら」
「本当はもっとランクの低い魔法を使うつもりだったけれど」
依子は構えを取りながら言う。
「そうもいかないようね。なら」
「!?下の薔薇園が」
それぞれ五色の園が竜巻の様に動きはじめた。薔薇園そのものが動いている。依子はその上に立っていた。そして悠然と笑っていたのであった。
「薔薇園が動くということは」
「ええ、貴女の予想通りよ」
依子は動きを速くさせる園の上で応えた。
「五人の生贄を捧げたのはこの為」
「魔界を」
「魔界の瘴気を受けても貴女達なら何ともないでしょうけれど」
沙耶香も速水も唯の術師ではない。その力はあまりにも絶大なものがある。魔界の瘴気程度でやられる人物ではない。しかし。そこからやって来る別の存在に対しては別だ。
「もうすぐここに魔王達がやって来るわ」
依子は述べた。
「魔界の支配者達がね。私の招きに応じて」
「薔薇の魔力と生贄を使って召還した魔王達がね」
「そうよ」
つまり今動いている薔薇の園は魔法陣ということなのだ。五色の配色と薔薇の魔力、そこに生贄を交えて作り上げたのものである。恐るべき力を持っていることは言うまでもない。
「それが貴女達の相手をしてくれるわ」
「この世を魔界に変える為の前夜祭としてね」
「魔王にも知り合いはいるけれど」
「けれど魔法陣を開いたのは私」
魔法陣を開いて召喚されたからにはその召喚した者に従わなくてはならない。それが魔界の掟であった。魔界にも掟はありそれはかなり厳しいものであるのだ。
「だから私に従うのよ」
「大した力ね。それだけの魔王達を召喚出来るなんて」
「これも全て薔薇と血のおかげ」
依子はまた言う。
「そして貴女達に最初に見せてあげるわ」
「生憎ですが」
ここで
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