第八十三話
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なりすぐさまその銃を構え、ゾンビにヘッドショットをかましてみせた。頭部を一撃で撃ち抜かれたゾンビは、その緩慢な動作を止めてピクリとも動かなくなる。
「…………」
「ふぅ……どうしたの翔希?」
「いや……何でもない」
西部劇のように、銃の銃口に息を吹きかけている里香に――もちろん煙などでていないので、特に意味はないが――何とも言えない感情を抱いていると、そんな俺の妙な視線に感づいたのか、里香はこちらに向けてニヤリと笑っていた。……彼女が可能な限り出来るだけあくどい感じで。
「なぁに? もしかして、女の子には背中でガクガク震えて貰ってた方が良かった?」
……そんなことを言っている里香の背後から、ゆっくりとゾンビが歩いてきていた。器用にも足音を消しているからか、里香はそのゾンビに気づいている様子はなく、楽しげな様子でこちらを追求してくる。
「お生憎様。ま、こういうところで可愛いらしい悲鳴を聞きたいなら、明日奈の方が適に……なに? 後ろ? ってキャァァァァッ!」
さらにとつとつと語っている里香に対し、何も言わず静かに彼女の背後を指さすと、振り向いた瞬間に目の前にいたゾンビに可愛らしい悲鳴をあげてくれる。……とはいえ、流石に目の前で襲われるというのは目覚めが悪いので、接近するゾンビに向かって素早くレーザーガンを放つ……と。
「……外した」
「どぉうやったらこんの距離で外すのよぉ!」
里香の悲鳴交じりの文句にせっつかれて、ベテラン刑事装備役のレーザーガンは素早くエネルギーの再装填を完了すると、今度はさらに接近していたおかげでようやく当たる。そのままレーザーガンを連射すると、何とか里香に食らいつく前にゾンビは倒れ伏した。
「大丈夫か、里香」
腰を抜かしたのか、へたり込んでいた里香に手を貸して立たせようとすると、下から物凄く睨まれた。涙目になりながらこちらを見る里香の唇がもごもごと動いており、どんな罵倒な言葉を俺にぶつけようか、唇自体が思案しているように感じられた。
「……バカ」
たっぷりと時間をかけて里香が絞り出した言葉は、そんなだった一言。里香にそっぽを向かれながらも、こちらの手をしっかりと握り返してきたのを確認すると、思いっきり引っ張って無理やり立たせた。
「……あんた、ぜっっったい来てたの気づいたでしょ!?」
そっぽを向いた瞬間に素早く目をゴシゴシと擦り、里香から恨めしい視線がこちらに向けられる。今度はこちらがそっぽを向きたいところだったが、そうもいかない雰囲気と威圧感が彼女からは発せられていた。……何やら、オーラのようなものまで感じられる。
「悪い悪い、つい、ほら……な」
「な、じゃ、な、い!」
残念ながら弁解は意味をなさない
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