浅き夢見し、酔いもせず
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モノの考えもなんとなく分かった。
そしてそういうモノがどういった時に窮地に立たされるかも。
拳を包んだ副隊長に微笑んで、彼女は白馬を翻した。
悪辣な敵との戦いは慣れている。その思考を読み解くことも、不可測で何が起きるかも、人の感情は度し難く、命令だけに従えるほど甘くない。
広い戦場でも熱気が一番高い場所は直ぐに分かった。其処目掛け、彼女は最速で馬を駆けさせた。
――まだ死ぬには早いぞ孫策。刺し違えてでも、なんて考えはやめておけ。お前はまだ此れからの孫呉には必要だ。
疾く急げと、腹を蹴られた愛馬は大きな嘶きを上げた。
――なぁ、秋斗。孫策を救えたら、お前も救えるかな? この戦の後に孫策と周瑜を説得出来たら、お前を止められるかな? 死に場所ばかりに突っ込みながら、命を果たしてでも自分が望む世界を作ろうとするお前を諦めさせれるかな? そんなこと考える私は、やっぱり甘いか?
白蓮の心の底にある友の笑顔は、いつだって平穏の世界に置き去りで。
彼に似た誰かを救い、自分達と手を繋いでくれると示すことでやっと、彼と笑い合えるような気がした。
――私は平穏に暮らすお前と生きたいんだ。くだらないことで笑って、貶して、ふざけ合って……昔みたいにさ。
命を使い果たす生き様も好きで、その想いは本当に大切だと理解している……が、白蓮はやはり、大切なモノ達が死ぬことなく笑って生きていて欲しいと願う優しい王であった。
†
何故、何故、何故、何故なのだ。
ねねの心中を支配しているのは疑問ばかり。本来なら有り得ない事態が目の前で繰り広げられていた。
飛龍隊の特性として旧呂布隊のようにはいかずともある程度自身の思うままに動かせることは出来る。
後悔と怨嗟と憎悪に塗れた狂兵も作り上げた。この戦場は自分の思惑通りに作り上げられたと言っていい。兵士達の士気は上がり、連携は出来ずとも戦のカタチとしては最善。敵が必死であろうとごり押し出来るくらいにはなったはずなのだ。
周瑜の指揮は確かに上手い。其処に諸葛亮まで加わっているのだから一人では限界がある。公孫賛の遊撃も攪乱も飛び抜けたモノではないが時間が経てば容易く崩されるのは目に見えている。
しかし狂えば、命果てるまで戦わせられるならまだまだやれる。そう思っていた。
だというのに、たった一つの誤算が全てを劣勢へと落とした。
――何故なのです……。
目の前で起こっていることが理解出来ない。
目の前で繰り広げられる戦いが理解出来ない。
目の前で飛び散る火花と金属音が理解出来ない。
――何故なのですか……。
彼女は最強のはず。
彼女は無敵のはず。
彼女は天下無双のはず。
彼
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