浅き夢見し、酔いもせず
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ってくるような輩ばかり。こんなモノは通常の戦では測れない。
きっと朱里も分かっているはず。それを信じて動いて来たが……白蓮は少しばかり堪えていた。
哀しい兵士達。死ぬ為に戦う兵士達。其処にある想いは間違いなく本物で、彼女が大切にしていた愛しいバカ共を思い出す。
――でも違う。こいつらはあいつらとは全く違う。
その違いを、白蓮は明確に感じ取る。
バカ共は誰かの為に怒って抗った。
目の前の敵は自分の為に怒って戦っていた。
だからだろう。白蓮に侍る白馬義従は苦々しげに侮蔑の視線を向ける。
其処にある想いは本物だが……彼らにとっては不快に思う感情でしかない。
「……正面から戦おうなんて思うなよ?」
第一師団の副隊長に告げる。頷くも、彼は敵兵を射殺さんばかりに睨みつけていた。
「忠義なんて無い。悔しい想いと許せない想いはある。でもそれは全て自分の為。そんなあいつらはお前らとは全く違う。
孫呉はきっと負けないけど……それでも戦だから数が減る。この狂気を覚ますか、殲滅しない限りこの戦は終わらない」
考えても自分では出ない答え。ふいと頭に思い浮かぶのは一人の友達だった。
――この程度の相手の狂気くらい覚ませないと、あのバカが溢れさせる狂信は払えない。
似て非なる在り方。今の敵兵よりも濃密に仕上がった最悪の軍と、いつかは戦わなければならない。
殲滅しない限り止まることは無い、と自分で行ってみて笑いそうだった。
間違いなくその部隊は、殺し切らないと止まらない。彼を抑えても彼が勝利を確信していたら止まることは無い。
最後の一兵に至るまで戦い尽くすこのやり方は、なるほど彼の部隊と似ているのだろう。
今はいい、と頭を振った。あの化け物部隊のことを考えれば、少しばかり頭が落ち着いてきた。
胸を張り、弓に矢を番え、彼女は一人二人と敵を殺していく。
「指示を待とう。私達に出来るのはそれくらいだ。それと絶対に小蓮と離れるなよ? 第二との連携重視で掻き回せ」
――ただ、秋斗の部隊相手なら考えなくていいことも、この敵が相手なら考えとかなくちゃな。
冷静に判断しなければ戦況は引っくり返る。
此処が一番の正念場。彼女は判断を誤るわけには行かない。
信頼はある。部隊の者達は任せても仕事を遣り切ってくれる宝だ。ずっと従ってくれている大切な戦友で、あの戦でも頼りにしてきた奴等。
それなら、と白蓮は一つだけ自己の予測を織り交ぜる。
「副隊長。白馬義従の動きは私が居なくてもある程度出来るだろ? 軍師の指示には全て従え。小蓮のことも任せた。私はちょっとさ、無茶する奴の援護に行って来るよ」
無茶ばかりする男が友だから、この戦場で無茶をしようとしている
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