浅き夢見し、酔いもせず
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て私があなたの剣を受けられるか、分かる?」
ギリギリと、拮抗したままの力が強くなった気がした。
まだ余力があったのかと雪蓮は驚くも、自分がそれを抑えられることも驚きだった。
心に歓喜と、感謝を浮かべた。
「……私達の剣にはね、いろんなモノが乗ってるの。自分の夢だったり、他人への想いだったり、そりゃ復讐だって想いの一つよ? 憎しみは人を強くするってのはあながち間違いじゃないんだから」
反応が返ってくることは無かった。
周りが慌ただしくざわめいていたが、そんなモノに構っている暇は無い。虚無を映すだけの瞳の奥底を、雪蓮は真っ直ぐに覗き込んだまま。
「想いの強さによって剣は変わる。人の力って鍛錬とか訓練とかだけで強まるわけじゃない。昔のあなたの剣は……本当に重かったわよ」
あの時の剣なら耐えられなかった。拮抗することなんて絶対に出来なかった。
「だけど今のあなたの剣には重さが無い。戦好きのバカでももうちょっとはマシな剣を振るでしょうね。それほど、あなたの剣は軽すぎる」
ググ……と恋がさらに力を込めた。しかし、それでも全く雪蓮の方に動くことは無かった。
「長い年月想って来たわ。生まれてからこれまで、ずっとこの大好きな大地の為を想って剣を持って来た。皆の平穏を守れる力を、皆の絶望を切り拓く剣を、それが私だけの想いのカタチ」
僅かに動く刃の位置。鍔迫り合いで膠着したままのはずが、他の追随を許さぬはずの飛将軍の方へと押し込まれた。
「ねぇ、呂布。あなたは何の為に戦ってた?」
憐みも同情も無い。自分が行った結果の絶望で変わった英傑の武に、そんな感情を持つことは侮辱にあたる。
出来ることなら聞いてみたかったから、雪蓮は尋ねてみた。
「戦好きなだけのバカだったとしたらもうちょっとは重かったかもしれない」
戦うことが好きな人には、自分の楽しみの為という想いがある。
「主の為にと戦う忠義モノならそれよりももっと重かったかもしれない」
世にありふれている武人達の在り方なら、其処に大きな力と想いが宿っていたことだろう。
「でも……違うわよね? あなたの本当の力は、あの時の力はその程度じゃなかった」
化け物と呼ぶに相応しくとも、そのモノは人としての力を持っていた。人中の呂布とまで言わしめたその武は……どのような想いを乗せていたのか。
――呂布本来の武力は、ただ暴れまわるだけの下らない力なんかではなくて、純粋で澱みの無い人の力。それはきっと……
「……大切な人を守りたいって想いが、あなたの剣には宿っていたんでしょう?」
自分と同じく、とは言わずもがな。
子を守る母のように、家族を守る父のように。それを無くした飛将軍に、恐怖など感じるわ
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