浅き夢見し、酔いもせず
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する人の為に。
壊してしまったことは謝らない。私が徐晃と同じ立ち位置に居ても華雄は殺した。袁家に縛られていなくても董卓は失墜させた。謝るのは私と共に戦っている仲間に対する侮辱だ。
受け入れろとは言わない。私は受け入れられなかったから孫呉の主として戦っているのだから、それを言ってしまえば私は孫呉の王では無くなる。
不思議と憎しみは無かった。責務か義務か……否、これは私がしたいことで、私の命の意味だから。
「あなたに恨みは無いわ、呂布。でも私には守るモノがあるから……」
チャキ……と短い金属音。柄をぎゅうと握るとその空気の変化を読んだのか呂布も構えを変えた。軽々と肩に担いだ方天画戟はなかなかどうして似合っていた。
愛馬が小さく嘶いた。よく私についてきてくれた。でも次で終わりにするから、もう少しだけ耐えてね。
風の音が止み、兵士達も特に動こうとはせずに私達に視線を投げるだけ。ゴクリと生唾を呑む音が幾重。
「勝たせて貰うわよっ」
叫びと共に馬の腹を蹴った。同時に……呂布も赤兎馬と共に駆け出した。
一太刀、一太刀だけでいい。それさえ凌げば持ち込める。
そこからが私と呂布の最後の戦いになる。
接敵は数瞬の間を置いて直ぐに。
煌く凶刃が唸りを上げて首に突き付けられた。
たった一瞬の交差に死が降りかかる。
存外、あっけないモノだなとおかしな思考を頭に浮かべて、口元は楽しさからか笑みに変わっていた。
私の“勘”は、まだ鈍っていなかったらしい。
†
ギシ……ギシ……と骨が軋むような音を上げ、二人の乙女は動きをピタリと止めていた。
一閃の疾さはやはり恋に分があり、初手は雪蓮にとって不利であった。
しかし、凡そ人のモノとは思えぬ反応速度で……いや、きっと持前の勘で当たりを付けていたのだろう……それを避けた雪蓮は斜めに逆袈裟に剣を振るった。
化け物とさえ言わしめる恋の反撃は人の出せる限界値。完璧なカウンターのはずが、雪蓮の剣を方天画戟で受け止めたのだ。
互いの馬は頭をぶつけ、それでもと主を支え続けていた。
力比べをしているようにも見える必殺の距離。どちらかが動けば均衡を崩せるが……二人共動こうとしなかった。
剣と方天画戟が震えていた。顔と顔を突き合わせて互いの瞳を覗き込む。
天下無双の瞳は虚無に支配されていた。
孫呉の虎の瞳は人への想念で溢れていた。
「……」
「ねぇ、呂布?」
ぽつり。雪蓮の唇から零れた呟き。届いているのか、届くのかすら分からない。
人形相手には無駄だと、雪蓮は思った。それでも楽しくて、何故か哀しかったから語り掛けた。
「どうし
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