浅き夢見し、酔いもせず
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間違いなく今の呂布相手なら私の剣は届くのだ。
一太刀振られた。豪閃と呼ぶべき鋭さはあれど、その剣戟を私は受けることが出来た。
乾いた金属音を立て、剣と方天画戟がぶつかってすぐに互いの武器を弾きあう。
何合こうして打ち合っただろう。それでも私の手に痺れは無くて、十分渡り合える。
内からにじみ出てくる力があった。
後ろには傷つけてはならない人達が居る。隣には共に戦ってくれる戦友達が居る。それだけで私は無限に戦える。
身体に疲れなど感じず、只々研ぎ澄まされた神経が全てを伝えている。
敵の剣戟の所作も、偶に襲い来る兵士からの不可測の刃も、どれもが手に取るように分かる。
人形のような昏い瞳は何も映していない。
ただ命令に従って、ただ目の前の人間を殺して……ただ生きているだけのお人形。
今の呂布は怖くない。確かに化け物だが、私は怖いと思わない。
一閃……頬をギリギリ掠めた敵の刃。打ち上げて出来た隙に切り込むも、返しの袈裟で打ち下ろされる。しかしやはり、呂布の刃も弾かれた。
「……“軽いわよ”、呂布」
ふいに笑えてきた。言っても無駄。でも言わずにはいられない。
ああ、そうかと気付く。ずっと考えていたけど、やっと終わりを読み取れた。
こいつの倒し方は……ある。
――打ち合うからダメなんだ。まず速さが違うんだから……
分の悪い賭けだろう。これで呂布が本気を出していないとかだったら一環の終わりだ。
そして、もし敵兵が形振り構わず私を殺しに来ても終わりだろう。
かけ離れた武力から、兵士達はたまにしか私達の一騎打ちに介入してこないけど……万が一もある。
いや、一騎打ちという方がどうかしてる。人形相手なのだから、これは命を摘み取る戦争のただ中。お綺麗な戦など初めから無い。
私もまだ甘かったらしい。張コウなら、きっと嬉々として殺しに来る。陳宮は何をするか分からないし、荊州兵も同じく。だから私が死ぬ可能性など、星の数ほどあるのだ。
後ろを見たくなった。愛しい冥琳の目を見て……無言の信頼を感じたかった。
弱気になってるのかもしれない。でも出来ると奮い立たせる。
このままジリ貧で戦い続けたら可愛い兵士達の命が多く散って行くだけだ。
荊州兵を復讐の狂気から覚ますには大きな衝撃が必要だ。それこそ……天下無双の化け物が敗北するような大きな事実が。
私がするしかなくて、冥琳は出来ると信じてくれてる。だから大丈夫、大丈夫だ。
じ……と見据えればその容姿が良く見えた。
私よりも年若い少女。背丈も私より低くてどこからそんな力が出ているのかも分からないくらい細見。
――出来ることなら本調子のあなたを倒したかったけど……そうも言ってられないのよ。全ての愛
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