暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
翔べない鳥の翼
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ている。
 ついでにベゼドラも、苦悶の表情で地面に転がったまま。

 光は断続して降り注ぎ、屈折して、人の目や脳に色を認識させるという。
 よって、時間が止まった『あらゆる物が動かない』世界に色は無い、と。
 光源が存在しない状態なのに、真っ暗にはならず無色で済んでいるのは、自分と自分の周辺の時間を動かしているからだろうか。
 ご都合主義だな。

「ベゼドラ、動けますか?」

 靴跡が残らない雪の上を歩いて、ベゼドラの肩をぽんっと叩く。

「……っが、はっ」

 急に咳き込み始めるベゼドラにも、色が戻った。

 あ、そうか。
 この場合の光源は自分になる、と考えれば良いのか。

「な、んだ……こりゃ……。……耳が痛ぇ……」
「振動がほとんど無い状態ですからね。静寂が耳に痛い、を極めてますよ。貴重な体験です」

 呼吸の為に、ベゼドラと自分の周りの空気だけは動かしているが。
 まるで水中に居るような、奇妙な感覚だ。

「は……っ デタラメも良いトコだな。さすが世界樹の授け物」
「ええ。本当に滅茶苦茶です。どんな力だろうか、とは思ってましたけど。まさか、世界規模で時間を止めてしまうとか。びっくりしました」

 使い方は自然と理解できる。
 ええ、確かに解りましたけども。
 すっごくギリギリで、物凄く焦りましたよ、長様。

「アリアに敵う力……、か。そりゃそうだ。こんな反則技、どこのどいつが持ってたんだか」
「普通に考えるなら神でしょうね。天上の神々に仕えている誇り高い一族が護ってきたのですから。それより、急いでここを離れますよ。長く止めてはいられません。正直、もう辛いです」

 今の隙にレゾネクトをどうにかできれば良いのだが。
 戻りも進みもしない体には多分、傷一つ付けられない。
 柔らかい筈の雪に足が沈まないのと同じように。

 時間の静止は、変化の停止、か。
 興味深い。

「外付けのクセに消耗すんのかよ! 面倒くせえな!」

 慌てて立ち上がったベゼドラが、自分の腕を自身の肩に掛けて背負っ……

 え?

「言っとくが、衝撃の緩和とかは期待すんなよ!」
「っわ っ」

 ドンッと地面を蹴って飛び上がる。

 なんだろう、これ。
 物凄く高い。
 二階建ての家とか、足下に小さく見える。
 遠くに街とか、山とか、川とか。
 まるで子供の玩具みたいに、全部が作り物めいて見える。

 ええ?
 ここは、どこ?

「ベゼ……ッ」
「口開くな。舌噛むぞ」

 ぶわっと飛び上がったと思ったら、少しだけ浮遊して、今度は急降下!?

 って、これは、もしかしなくても『跳躍』!?
 ただの跳躍なのですか、ベゼドラーっ!?

「…………ッッ
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