第2話「少年は悲しみを乗り越え愛しき人に刃を向ける」
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、さっきとは打って変わってハイテンションにモンキーレンチで自分の頭を叩きながらはしゃぎまくっている。
いや、テンションは悲しみに満ちていた時と同じだ。感情の矛先だけが『悲』から『歓喜』に変わったと言った方が正しいのかもしれない。
あまりの感情の切り替わり具合と脈絡のない意味不明な言動を聞かされた双葉は、何だかうんざりして相手にする気すら起こらない。
夜な夜な聞こえる謎の声の真相もわかったところで、双葉は一旦出直すことにした。まだどこかをさ迷ってるだろう兄を見つけて、この依頼の後始末を任せるのだ。本当は今ここで片づけた方が良いんだろうが、こんなガキの相手は面倒くさい。というより嫌だ。
「しよう、破壊しよう。今までの歴史になかった史上初の快挙を成し遂げよう。これぞ祭りだ、フェスティバルだ。それがアニキの大好物だ。ああそうさ――」
まだまだ続く金髪の少年の演説を無視して、双葉は寒々しい空気が漂う外へ足を向けた。
されど――少年の語りは彼女が廃倉庫から出るのを許さなかった。
「高杉が派手に世界を壊す!そしてこのオレがその前祝いに盛大にモノを壊ァす!」
高らかに謳われる宣言の中には、双葉にとって思いもよらぬ人物の名があった。
――高杉!?
双葉の心はさっきまで無関心だった金髪の少年に釘づけとなる。
一瞬耳を疑ったが、金髪の少年は間違いなく『高杉』と言った。なら彼は鬼兵隊の人間か。
しかし本当にそうなのか。チンピラが大将の名を借りて暴れるように、ただの不良が憧れて勝手に名を語っているだけかもしれない。
ましてや、めちゃくちゃに並べた単語を喋るだけの少年がほざく事など……。
だが、双葉は感じていた。金髪の少年から高杉と共通するモノを。
『破壊』
この短い時間の中で少年が何度も口にしている言葉。
そして今の高杉にとり憑いている言葉。
「おい、貴様」
呼ばれて、語り終えた金髪の少年はこちらに向き直る。
「貴様は鬼兵隊に属する者か?」
双葉の問いに金髪の少年は誰かを思い浮かべたのか、うっとりするように天井を見上げた。
「そう、あの夜はこんな星も見えない真っ暗な空だった」
「天井しか見えんぞ」
双葉はツッコむが、夜空は確かにあった。
天井の隙間から見える闇の空を瞳に映して、金髪の少年は再び語り始めた。
* * *
オレは故郷を飛び出してこの国にやって来たが時は平凡に過ぎてゆき、毎晩ガラクタを解体しては螺旋の様に繰り返す日々をつまらないとも面白いとも思えないまま江戸の夜を歩いていた。
すると、そこにジョーイシシだかロウシだとかいう男たちがオレに絡んできた。なんでもオレをアマントと勘違いしたらしい。変わらない日々に退屈していたオレは、鈍った身体の運
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