トワノクウ
最終夜 永遠の空(五)
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「これでいいんだって信じてた。でもね、今のあまつきを見てると分からなくなるんだ。人と妖が憎み合って殺し合うあまつき。きっと上手くいくって信じてた俺が馬鹿だったのかな?」
すぐに否定してあげることができなかった。
くうは人と妖のしがらみのために友人たちに二度殺された身だ。友情があれば乗り越えられる、といった中二病的なことは信じていなかったが、潤と薫の仕打ちはかなり効いた。
「俺の話はこれでおしまい。質問はあるかな」
くうは痛ましく首を横に振った。語る声から滲み出る鴇時の苦悩を読み取れた。これ以上問い詰めたくなかった。
「これから、どうするんですか?」
「俺はがしゃどくろと一緒に消える。あまつきの支配者は名実共にいなくなる。それで晴れてあまつきは自由だ」
「消えたら、彼岸に帰れるんですか?」
鴇は苦笑して首を横に振った。
「大丈夫。くうちゃんは俺がどんな手を使ってでも、お父さんとお母さんのとこに帰してあげるから」
「くうのことなんていいです! お父さんとお母さん、ずっと、今でもきっと鴇先生を待ってます!」
「俺の本体はあくまで彼岸の六合鴇時。『俺』は本体が残していった、世界を維持するために眠るだけの、ただの装置。彼岸の『俺』に帰ろうとしたら、記憶も経験もかけ離れすぎた俺達同士で脳がごっちゃになって、廃人になりかねない」
「――消えてでも、あまつきの皆さんを守りたいんですね」
くうは涙を気合で押し戻し、鴇時をまっすぐ見上げた。
「あなたはあまつきが本当に好きなんですね」
泥沼からでも咲く、蓮のように。
嘘からでも、真の花は、開く。
「うん。大好きだ」
くうは泣き笑いになった顔を俯けた。今の顔を鴇時に見せるわけにはいかなかった。
(ほんっと、私ってば、何のために産まれてきたんだろう。助けるべき人を助けるどころか、当の本人がそんなもの必要としてなかった。産まれ損じゃない)
「――私、自分が何か特別なことするために、あまつきに来たんだって思ってました。でも」
梵天は妖を人の世から忘れさせ、人との対立にひとつの決着をつけようとしている。露草も空五倍子も天座の一員としてその事業を助けていく。
朽葉は人間側のよき仲介役として尽力し、奔走している。沙門もまた然り。
「でも、もう何もかも皆さんがとっくにやっちゃってて、人と妖の関係において、くうにできることは何もありませんでした。最初はさびしかったけど、今はへっちゃらなんです」
――それは彼らがどうにかすべき問題で、くうが出しゃばる問題ではなかったから。
「くうだって自分でがんばりたいと思ったことを、お父さんやお母さんに口出しされたり、勝手に手伝われたりしたら
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