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トワノクウ
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深夜 朝虹
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は著してます。正真正銘の妖≠フ割合は零(ゼロ)。実際妖として生きる皆さんには複雑かもしれませんが」

 梵天も露草も空五倍子もさしたるリアクションをしない。
 くうはほっとして、続けた。

「妖が視える人間はこの時代においても希少価値。それでも妖を実在と扱うのは民衆の信心深さでした。ですが開国で西洋合理主義が入って来てからは、妖を認めるより認めない風潮になっていきます。ただでさえ少ない妖が視える人間は激減すると考えていいでしょう。あと三百年もすれば、むしろ妖を視たとか言う人間のほうが危険視されて、病棟送りな時代になります。潜伏期間が終われば皆さんは自由です。妖として、したいようにして下さって大丈夫です。視えない向こう側はどってことありませんから」





 潜伏期間の提案を呑んでくれた礼として、くうは梵天に指示された土地へ赴いては、人の住居の近くにいる妖たちと話して、棲み処を変えてもらっていた。
 ここぞとばかりに、献上された「天座の雛」の二つ名も使いまくった。

 気力体力ともに消耗するが、これも、人にも妖にも良い時代を迎えてもらうためだと思えば、頑張れた。





 その日の分の説得ノルマを終えたくうは、馬喰町の寺に帰った。

 寺の庫裏に上がって、一直線に向かったのは台所。
 かまどの前で夕飯を作っていた朽葉のもとだ。

「ただいまです、朽葉さん」
「おかえり。くう。もうすぐ夕飯だから着替えて待ってろ」

 ――朽葉は妖祓いなのに、くうが天座に協力することを止めなかった。それどころか、推奨してくれてさえいるようだった。


 ――傷つけ合わないために最良ならしかたない。私もできる限り力を貸そう=\―


 とまで言って、進んで陰陽寮に赴いている。陰陽寮がどんな方針で動いているかまでは、くうの耳には入れてくれなかったが。

「それにしてもお前はとんでもない奴だ」
「ほぇ?」

 朽葉はふり返らないまま、かまどに置いた鍋の蓋を取り、杓子で中身を混ぜる。

「二度も同郷の友に否定されたのに、人にも妖にも良い時代が来るように奔走している。私がその境地に至るまでに何年かかったと思う? まったく、出来た娘だよ、お前は」

 ちらりと窺えた朽葉の横顔に浮かぶのは、苦笑。


 薫と潤に一度ずつ「殺された」のは苦い思い出だ。くうは延々鬱々として、鬱々として――ある日、突き抜けた。

「なんだかね、確かに嫌だったし傷ついたし今でも辛いんですけど、それを理由に引き篭もりたくないと思ったんです。そういうの、かっこ悪いじゃないですか」
「――そうか」
「薫ちゃんが聞いたら、『あんたのそういうとこが大嫌いなんだよ』ってまた言われちゃいそうですけど」
「鴇のように知恵にも
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