開戦
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ふと思った事がある。
「なんで来る時に使わなかったんですか?」
「そう訊くと思った。これだけの人数を運ぶとなると、消費する魔力もかなり多いから、出来るだけ余力を残しておく必要があったの。だから飛行魔法で極力消耗を避けたわけ」
「それにタンカーの座標も固定されていなかった以上、実際に来ないと確認出来ないわ。位置をしっかり計算できなければ俗に言う『石の中にいる!』みたいな状況になり兼ねないから、転移魔法は帰還や脱出、もしくは指定されたポイントを行き来する時によく使われるのよ」
「なるほど……私は転移魔法が使えないので、勉強になります」
「ん? 確かあのユーノっていう坊やも転移魔法が使えなかったっけ? 親しい仲に見えたから、少しは仕組みの事を聞いてるかと思ってたけど、案外何も話していないんだねぇ」
リーゼロッテさんが意外そうに言ってきた言葉に、私は過去の自分が何も話していなかったのを再び実感した。私が魔法に触れるきっかけを作ったユーノ君……一番近くに居たはずの彼と腹を割って話した事が、私には無い。
「……帰ったら、いっぱい話します」
「あの坊やの意識が目覚めてたらね。だけどこの状況でラジエルが彼を送ったって事は、余程重要な情報を握っているに違いない」
「そもそも、あっちは大丈夫なのかしら。いくら魔法に頼らない布陣を敷いていると言っても、相手は絶対存在とイモータル……。きっと苦しい戦いになると思うわ」
リーゼ姉妹が懸念している通り、あの辺りでは魔法が使えなくなった。そんな状況下でエレンさん達がどうやって立ち向かうのか、ここからでは見る事が出来ない。それが何となくもどかしかった……。
「話はもういいか。そろそろ転移魔法を発動させるから、範囲から離れるんじゃないよ?」
「座標ポイントを聖王教会医療センターに設定する。転移開始!」
リーゼ姉妹が発動した、タンカーの甲板全体を覆う程の光を発する広範囲の転移魔法によって、タンカーの乗組員、騎士達、はやてちゃんと私達は聖王教会の病院の前へと瞬時に移動した。
……パサッ。
「ん? 何か落ちたの?」
転移が終わって一息つこうとした時、艦長さんの服の中から一冊の本が出て来た。何の気なしに興味本位でその本を見た瞬間、私は真っ赤に爆発した。
『Playboy』
別名。
グラビア本。
「ふ、ふぇぇ〜〜〜〜!!!?」
「おぉ〜、尋問されても手放さなかった辺り、コイツ漢だねぇ」
「聖王教会の重要な機密より、男の意地を守ったって言うの? というかこの艦長……実はバカでしょ、全く……」
とりあえずその本はリーゼロッテさんがニヤニヤしながら艦長さんの服の中に、そぉ〜っと戻してあげた……。はやてちゃんがこの本を見たら
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