開戦
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導師として生み出されたのに母親からの愛情を受けずに育てられた。今では親子関係が改善しているけど、父親がいないあの家庭で重度に病が進行しているプレシアまでいなくなれば、あの二人は今度こそ自分達の力で生きて行かなくてはならなくなる。そしてヤガミも幼い頃に両親を失い、私らのせいもあって愛情を受けることもなく、足のマヒも相まって心細く孤独に生きてきた。今では足も動くようになり、守護騎士達が新しい家族になってはいるけど、その代わり彼が……」
「それに比べて……あんたは家族の愛情を受けながら育ち、仲の良い友達もできて、魔導師として破格の才能を持ち、更に行方不明だった父親も帰ってきた。家族を誰も失っていない、それどころか取り戻している。これだけの要素があるのに、恵まれていると言わなくて何という?」
「……………わ、わた、しは……」
「私達は何も、恵まれている事が悪いと言っている訳じゃない。そういう環境で育ったからこそ、なのはさんは友達想いの性格になったのだと思うわ。だけど何も考えず善意を向けても、相手にとってそれは時に押し付けだったり、不快なものに見える時がある。そういう考え方の違い、価値観の違いをしっかり認識しておかないと、せっかく仲良くなったあなた達の関係までもが壊れてしまう事だってある。それを覚えておいてもらいたいの」
「よーするに、親しき中にも礼儀ありって事。もしなのはさんの家族が事故やテロで、なのはさん以外全滅していたとしたら、その時の感覚は今と明らかに違うものだと想像できるでしょ? 後ろ盾が無い事の不安や危機感を、あなたは知らないでしょ?」
「……は、はい……」
「そういう事だから、ヤガミは自分と家族を守るために、成功すれば真っ当な立場を得られる単独任務をやろうと決めた。事前予測ではリスクが少なかったから、守護騎士も彼女の決断を後押しした。結果は失敗に終わってしまったけど、一人でもやれる事を証明しようとしたあの子の強い決意を、ただの善意で汚さないであげて欲しい」
「友達って基本的に助け合うものなんだろうけど、その人の事をちゃんと想ってあげられてこそ、本当の友達だと言える気がするよ。なのはさん、君は口だけ友達と言って他人の事を何も考えられない人間じゃないはずでしょ?」
「ちゃんと……想う……」
こうして言い聞かされてから、私はこれまでの自分を省みてみた。私は……やっと見つけた私の居場所を形作る人達を失いたくない。それを“私は良い子でなければならない”フィルターを通し、友達を心配に思って行動しようとする子、自分が正しいと思う事をひたすら行う子、そういう良い子の役割を演じてきた。ただ……役割ではあるが、同時に本音でもある私の気持ちは、もしかしたら相手にとっていらないもの、邪魔なものだったかもしれない。
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