居候
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「ったくよー、どういう頭の構造してんだかなー。」
「さあ………。」
「………………。」
黒髪の青年、金髪の少年、白髪の少女。
青年は愚痴をこぼしながら膝の上の黒猫を撫で、少年と少女は用意したお菓子を食べていた。
少年の母親と姉がどこかへ行った日。非科学的な力によりとある人間の国が一夜で半壊した。それをきっかけに、人間対魔導師という「魔導戦争」が始まったのだった。
「まだこの森に被害が出てないだけ良かったな。一発で怪しまれるぞ、この屋敷。」
「………。」
「おいアレン、なんか反応しろよー。」
「……………。」
「おーい?」
「へっ、何!?」
ぼうっと斜め上を見ていた少年が聞き返す。その様子に青年は呆れたように、
「心ここにあらず、ってか。まだガキだなお前。」
と返した。
「なっ…!」
「どうせ、レリーのことでも考えてたんだろ?模範的な弟だな。」
「う、うう…。だって………。」
少年は俯き、ぽつぽつと語り始める。
「あの時の姉さん、様子がおかしかった。ウィルに良い思いはしてないけど、ウィルの呼び出した動物たちをみんな焼き払うことなんてしない。…いつだったか、ルルーにクッキーあげてたし。そうだよね、ルルー。」
それに、あの時。少女は少年を『見ていなかった』。いや、きっと『見えていなかった』。自分がおかしかったのか、姉か。ずっと分からなかったのだ。
黒猫は少年の膝に飛び乗り、腕や腹に自身の顔を撫でつけた。
「ふーん……。そんなもんかね?」
「そんなものだよ。ウィルが嫌いでも動物は嫌いじゃない。蛇とかは例外だけどね。」
「マジか!?」
「…そんなんだから嫌われるんだって。」
明らかにいたずらする気満々の青年を睨む。本当に懲りない。
「………。」
先程から休むことなくお菓子を食べていた少女が、ふと顔を上げる。そして立ち上がり、リビングを出て行こうとした。
「ユイ?あ、書庫?」
「………。」
少女は首を横に振った。少年に近づくと、くいくいっと服を引っ張った。
「…誰か、来たの?」
「………。」
縦に一回。首肯である。
「おいおい…、言ってる傍からばれたか…?」
「そんな時はいつかは来る。それが今日だっただけ。」
「冷静だなお前。」
「ここで何か言っててもしょうがないでしょ。」
少年は少女を後ろに隠し、青年とともにエントランスへ向かった。ドアからはノック音が聞こえてくる。
「………僕が出るよ。」
少年が何食わぬ表情を装い、一度深呼吸する。
そして、勢い良くドアを開けた。
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