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ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第137話 眠れる少女達
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「………はじめまして、アスナさん」
勿論、眠る少女からの答えはない。そのアスナの頭部にはあの心底憎悪したものが……ナーヴギアがつけられてあった。濃紺のヘッドギア、たったそれだけで、人間をずっと……ずっと拘束する。
あの2年間、兄の和人を異世界に閉じ込め、皆を不幸にした。
そして、今も……、目の前に眠る妖精の様に美しい人の魂が何処かの世界に繋がれてしまっている。
「……妹さんは、来てないのかな?」
アスナを見て……、自然とそう呟いていた。あの時の痛み、苦しみ……直葉は そのナーヴギアを見て改めて思い出したのだ。だからこそ、玲奈とも話したかったし、同じ境遇の者として、かけられる言葉があるかもしれないと、思ったのだ。
「そうだな。……玲奈は、今日は来てないみたいだ。いつもはいるんだけどな?多分遅れてくるんじゃないか?」
和人は、アスナの手をぎゅっと握り……そう答えた。その姿を見て直葉はかつての自分の姿とダブって見えた。和人を心から笑顔にするのは、そして、明日奈の妹である玲奈を笑顔にするのには、彼女が帰還する事。
――……戻ってきて、和人を笑顔にして欲しい。
直葉は、そう強く思った。だが、同時に無言で少女を見つめている和人の顔はみたくなかった。
母の翠から打ち明けられた真実。和人と自分は本当の兄妹ではなく、従兄。ずっと、心に引っかかりがあったのは、兄ではなかったと言う事なのだろう。そして、この2年の間に、それは形を変えた。きっと、親愛……ではなく、彼への恋慕へと。
そして、和人が帰ってきて……更に自問自答を繰り返していく。
本当にそうなのだろうか?仲の良い兄妹だけじゃない、別の何かに……、それを望んでいるのではないか?
本来、眠っている彼女の前で考えるべき事ではない。それでも、彼女に出会ったら……、判るかもしれないと思ったから。でも、判ったのは……。
「………アスナ」
「っ……」
和人の明日奈を見る目。それは、単純なものではなかった。同じ年頃の少年少女がする恋愛とはレベルが違う。まるで、何年も、何年も、いや……それどころではない。前世から今生、そして来世へと何度も生まれ変わりながら運命の相手を探し求める旅人の様な眼だった。優しさだけでなく、狂おしいほどの慕情。その瞳の奥の色がまるでいつもとは違った。
2人の間には切っても切れない……いや、切る事自体、他人では出来ないだろう。……しては、ならないだろう。そう思える程の繋がり。運命の赤い糸。
自分では、決して手の届かないものだと言う事を、悟ったのだ。
「……アスナ。今日はな? 本当に重大ニュースがあるんだ。先にアスナに教えるぞ?」
そんな中で、和人は、アスナの手を握り……続けた。
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