第1章 光をもとめて
第7話 絶対王者 陥落
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ず捌ききっているのだ。
そして、何よりも有り得ない体勢から、有り得ない攻撃力が篭った一撃を放ってくる。隙だらけに見えて、実は誘い。……ユランは、その太刀筋を読みきれていないように見えたのだ。
「ユラン選手の動きも素晴らしい。力では不利と見て受流している。如何な強大な力でも身体に当てず、その軌道を変えられたら、0に等しいですからね。……ですが」
そう実況したそのときだった。
ランスは高く剣を掲げ、力任せに振り下ろした。素人目にも判る頭部を狙う唐竹。そんな判りやすすぎる太刀筋はユランにとっては恰好の的。カウンターを当てやすい軌道だったのだが、脳裏に嫌な予感が走った。
すぐさま、受流す事もせず カウンターを狙う事もせず、全力で後ろへと飛び回避したのだ。
その自分の脳裏に画いたイメージは間違ってなかった。
「っっ!?」
強烈な一撃は、闘技場の地面にまるで爆弾を破裂さしたようなクレーターを生み、周囲に大量の砂埃を巻き上げていた。
「むっか〜〜!! 避けるんじゃない! いい加減にしろ! 卑怯者が!」
「馬鹿を言わないでくれ。攻撃を避けるのも立派な戦術だ」
冷静を装っているが、内心は穏やかではいられなく、余裕も最早微塵も無い。
(……この出鱈目な威力は、あんなの 一撃でも貰ったら……。一発で終わりだな)
戦いの最中、ユランが頭の中で描いたイメージ。
それは、受けた瞬間自分の身体が観客席にまで吹き飛ばされる予知夢に似た光景だった。
「そう、これです」
実況の男は指を指しつつマイクも口元へと持っていき続けた。
「これこそが、ランス選手の強み。……圧倒的なパワーです。」
「げほっげほっ……。そ〜ですね〜……。まるで、私達のほうまで、砂埃が飛んでくるかと思いましたよ〜〜」
当然、飛んで着てはいないのだが、錯覚し思わず噎せてしまうほどだった。相対していない他者にまでイメージを植え付ける、凶悪で強大な力だ。ランスが振り下ろした剣先の地面は大きくえぐれているのだから。
「ご覧の通りです。ランス選手の攻撃は正に一撃必殺の剛剣。ユラン選手は、今は避け捌いていますが、体力・精神力がランス選手より先に尽きた時、それが勝敗を決しかねません。だからこそ、チャンスがあっても攻めきれない。あの威力を間近で見たユラン選手は脳裏に刻まれているでしょう。更に不安要素が生まれたと言っても過言じゃありません。」
「なるほど〜〜……参考になります〜!今後のお2人の戦い、まさに目が離せません〜!この勝負、勝つのはどっちでしょうか〜!」
観客の声援に応えるようにユランは、飛び出し連撃を浴びせるが、ランスはそれを避け、剛剣を振るう。実況の言うとおり、集中力を切らした時が最後、だろう。
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