第二十一話
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
驚かされる。
「しっかりするんだ」
少女の悲しみに触れ、俺は猛烈に彼女に対する愛おしさとなんとか護ってやりたいという気持ちが一気に高まるのを感じた。
どんなことが向こうの世界であったかはわからない。ただ、世界を追われ、誰も知らない世界に、たった一人で投げ出された少女の孤独を思うとどうにもならない感情が俺の心を支配した。
ただただ、護ってあげたいと願った。
衝動的に暴れる彼女をぐいと引き寄せ抱きしめると、少し強引に口づけた。
口づけてしまったというべきか。
びくんと一瞬反応をしたが、すぐに彼女はおとなしくなっていくのが感じられる。抵抗しようとする力は急速に衰えていった。
しばらくの間、口づけたままでいた。
王女の耳元に顔をよせ、ささやくように言った。
「君は一人じゃない。……俺がいるよ。俺が必ず守ってあげるから。安心して」
そうやって背中をさすってやる。
永遠にも続くかと思われるような彼女の悲しみが、やがて、次第に落ち着いて行くのがわかった。
呻きやすすり泣く声が徐々に収まり、それが寝息と変わるまでそれほどの時間はかからなかった。
あんなに凛としていた、意地悪で冷たくてワガママで無遠慮で傲慢な王女の振る舞いの奥底にある悲しみや孤独を知った俺は、強がったあの振る舞いは彼女が自分を護るための鎧だと気づき、なんか、すごい王女が愛おしく思ってしまっていることに気付いてショックを受けた。
……やはり(やはりなのかな?)、俺はロリコンなのか? などと認識させられ、衝撃を受けたりする。
ほっとすると、ゆっくりと王女を寝かせつけ、布団をかける。
寝顔はとても安らかに見えた。
カーテン越しに漏れてくる光でもう完全に夜が明けたことに気付く。
結局眠ることはできなかったか……。
まあ、いいや。
王女の違う一面を見られたということで成果はあったといえるもんね。ただ、衝動的にキスしたのは、ばれたらまずいなあ。
いろんな事を考えてしまうが、今はやらなくちゃいけないことがある。
伝言を残して、俺は部屋を出ることにした。
【俺なりにやってみる。何かあったら電話します。腹が減ったら食べるものは冷蔵庫にあります。でも、決して勝手に外に出たら駄目だからな】
命令調になるのは仕方ないかな。
あまりに彼女は目立ちすぎる。何も知らない少女が町を一人でウロウロしてたら確実に警察に保護されてしまうからね。
とりあえずはおとなしくしてもらわないと。
俺は部屋を後にした。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ