語り継ぐもの 2
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こちらへどうぞ」
右手で階段を示しながら一階へ誘導する。
大人しく付いてくる辺り、特に用事があったわけではなさそうだが。
「では、私はこれで眠らせていただきます。ベゼドラさんは貴方が案内してあげてください」
「ありがとうございます。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
クロスツェルさんを浴室に置いて、二階へ上がると。
ベゼドラさんが廊下で、何をするでもなく私の自室をじっと見ていた。
棒立ちしたまま、褐色の肌に黒い眉でシワを寄せ、紅い目で睨んでる。
次から次へと……いったい、なんなんだ?
「私の部屋に、何か?」
「白金色の髪と薄い緑色の目を持つ女に、心当たりはあるか?」
白金色の髪?
さっきの女性か?
いや。
「薄い緑色の目を持つ女性には、会ってませんね」
「本当に?」
「旅人に嘘を吐いても楽しくはないです」
でも多分、関係者だな。
金髪だったら、国中どこにでもごろごろ転がってるが。
白金色の髪なんて、そうそういるもんじゃない。
「……そうか」
不満を隠さず部屋へ戻るベゼドラさんを見届け。
自室に入って鍵を掛ける。
今度は誰も現れない。
が、落ち着いて寝られる状況でもない。
「はあ……。これ以上の怪奇現象は勘弁してください」
ため息混じりに呟けば、沈黙が返事をしてくれた。
朝食を楽しみにベッドへ潜り込んで、無理矢理意識を沈める。
こういう時の対処法も教えて欲しかったです、師範。
誰かの泣き声で意識が浮上した。
目が覚めたのとは違う。
夢だ。
ずいぶんと感覚がはっきりしてる夢だな。
周りは真っ暗で、何も見えない。
ただ、女性の泣き声だけが聞こえる。
「ごめん、なさい……。ごめんなさい……」
聴く者の胸を締めつける、切ない声色。
か細い謝罪の言葉は、誰に向けたものなのか。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ま……り……に、……ひか……、てらせ」
くり返し呟く女性の声に、小さな音の連なりが重なる。
音はどんどん大きくなって、聞き覚えがある旋律になった。
そして中盤、最後の言葉と泣き声が重なり。
ぴん! と張り詰めた音がして、時が止まる。
「「私の、アリア」」
パッと目を開く。
これは現実だ。
白い天井がベランダからの光を跳ね返して、室内を微かに明るくしてる。
そういえば、寝る前にカーテンを閉めてなかった。
もう朝か。
急いで旅人達の朝食を準備しなくては。
「おはようございます、フィレスさん」
「おはようございます
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