暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
語り継ぐもの
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うだ。
 旅人にあまり良い印象は無かったのだが、珍しいタイプだな。

「これから夕飯を作るところですが、なにぶん不器用なもので。味と量には期待しないでくださいね」

 黒い本以外の荷物が無いならと。
 まずは村人用の応接室へ案内して、テーブルを囲む椅子に座らせた。

「邪魔でなければ、私にもお手伝いさせていただけますか? 寝床に加えて食事まで無償で頂くというのは、さすがに心苦しいですから」
「それは構いませんが、お疲れでしょうに」
「慣れていますので」

 脱いだロングコートを背もたれに掛けてから、私に付いてくる白い男性。
 その背後で、黒いほうが両腕を伸ばしながらテーブルに突っ伏した。
 彼は見た目に反して体力が無いのか?
 いや、だらけてるだけ、なんだろうな。
 多分。

「……では、材料を出しますので、それで適当な惣菜を一品お願いします。調味料はどれを使っても構いませんし、使い切っても大丈夫ですから」
「分かりました」

 名前も知らない男性に目の前で料理をさせるなんて、初めての経験だ。
 艶やかで長い黒髪、穏やかに輝く金色の目、色白な肌に柔和な顔立ち。
 隣に立てば、ハーブのような清涼感のある香りがした。
 白い男性の外見と振る舞いは優男そのものだが、さて。
 料理の腕前はどんなものかな?
 少し、楽しみだ。


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