語り継ぐもの
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根拠は無い。
本当に、ただなんとなく、そう感じるだけだ。
不思議な宝石を袋に戻してリボンを結び、再度引き出しへしまう。
と。
一階から、カラランコロロンと軽やかな鈴の音が響いてきた。
玄関にぶら下げている呼び鈴の音だ。
誰かが訪ねてきたらしい。
「はーい! 少々お待ちくださーい!」
部屋を出て小走りで階段を下り、まっすぐ先にある一枚扉を外側へ開く。
ベランダの真下に当たる空間に、黒い髪の男性が二人並び立っていた。
コートから靴まで、全身真っ黒と真っ白、両極端な装いをしている。
「こんにちは。このような時間に突然失礼します。私達は旅の者ですが、たった今こちらの村に着いたばかりで、右も左も判らず困っています。もしよろしければ、この村に宿泊施設があるかどうかだけ、教えていただけないでしょうか? 無ければ無いで、次の村へ急がなくてはいけませんので」
どうやら村の門から一番近い家を選んで来たようだ。
礼儀正しい真っ白な男性が、穏やかな微笑みで私を見下ろした。
「宿泊所は無いです。ですが、これから東西南北どちらへ向かうにしても、『村』は当分ありませんよ。『街』ならありますけど。一晩でも良ければ、ウチに泊まっていきますか? もちろん、お代などは要りません」
扉を全開にして、入りますか? と手で示してみる。
「……大変ありがたいお申し出で、正直とても助かりますが……貴女は今、お一人で生活されているとお見受けします。見ず知らずの怪しい男を二人も引き入れるのは不用心でしょう」
玄関の内側を見て判断したようだ。
確かに、私は一人で暮らしている。
普段なら、親戚でも村の人間でもない他人を招き入れたりはしない。
普段なら。
「ご心配には及びませんよ。失礼ながら、反応を試させていただきました。ここでズカズカと押し入るような不躾な方々なら、蹴りを入れてお引き取り願うつもりでした」
幼い頃から武芸を噛んでる身だ。
相手を見る目には、ちょっとばかり自信がある。
この二人は問題ない。
黒いほうは微妙な気もするが。
「……なるほど。女性に対してたくましいと思うのは失礼でしょうか」
「いえ、純粋な評価として嬉しいですよ。どうぞ。何もありませんけど」
一旦外へ出て二人の背後に回ると、白い男性が戸惑いながら頭を下げた。
「ありがとうございます。お世話になります」
「貴方もちゃんとお礼を言いなさい」と、黒いほうに説教する白い男性。
黒いほうは、白い男性の声を避けるようにあさっての方向を見ている。
家の中をジロジロ見る感じではないから、単に面倒くさがってるだけか。
この様子なら、白い男性を押さえておけば大丈夫そ
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