case.5 「夕陽に還る記憶」
] 3.11 PM4:43〜epilogue〜
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捕捉しておくと、母は詩人で版画家だ。美桜は母に影響を受けて画家になり、母と同じように世界を駆け回っているのだ。
因みに、父は指揮者で弟は作曲家だが、これはいずれ話すことになるだろう。また、宣仁叔父の兄と俺の母であるアンナの父親は同じだが、宣仁叔父だけは違う。一度死別して再婚してからの子供が宣仁叔父と言うことだ。これもいつか話す時がくるだろう…。
「そうですね…。もう父との結婚から三十年以上経つわけですし、母だってきっと和解したいはずです。」
俺がそう言うと、叔父はにっこりと微笑みながら言った。
「まぁ、永住しろとは言わんし、今ある楽団を解体しろとも言わんよ。演奏場所や支援者はある程度なら紹介出来るから、一年程向こうへ来れるのなら、楽団員も連れて来るといい。姉もそうすることを願うだろうと思って、知り合いのプロテスタント教会の牧師にも話をしてある。ま、お前は日本でも指折りの、あの天宮グループの支援を受けてるようだから、今更要らぬ世話かも知れんがな。」
俺は耳を疑った。さっきまで考えていたことを、叔父はあっさりと打ち消してくれたのだ。
多分…俺のことを、母から色々聞いてきたんだろう。そうして、日本にくる前に根回しをし、俺がドイツへと出向くようにしてきたんだ…。全く、用意周到だ…。
しっかし…カトリックの司祭がプロテスタントの牧師と知り合いなんてなぁ…。
俺は暫く考えをまとめ、静かに待ってくれていた叔父へと返答した。
「分かりました。ドイツへ行きます。ただ、一ヶ月程待ってもらえますか?大学の方へは休暇を申請して代理を立てなくてはなりませんし、楽団員にも是非を問わないとなりませんから。それに…来年から発売されるCDのことで、天宮さんと打ち合わせないとなりませんしね。」
「そう慌てなくとも、私は後二週間程は日本で用事を済ませるつもりだし、あちらへ帰っても、数週間は駆け回ることになる。早くとも三ヶ月先だろう。」
叔父はそう言うや、すっと席を立った。
「まぁ、この二週間でどう動くかを教えてくれ。私はこれから名古屋へ行かなくてはならないから、決まったらメールを入れておいてほしい。一応チケットは私が用意するから、お前についてくる人数も入れておくようにな。」
「叔父様。そこまでしなくても、私だってチケット代くらいは出せますから…。」
「いや、これは聖堂の仕事でもあるんだ。出来るなら、楽団員全員来てほしいくらいなんだよ。それじゃ、連絡を待っているからな。」
叔父はそう言うや、直ぐに帽子を被ってリビングから出た。俺も叔父の後を追い、玄関まで見送りに出て言った。
「早く言ってくれれば車を用意したんですが…。」
「構わんさ。名古屋の話も今朝連絡があったんだ。もう少しここへ長居したかったが…。そうだ、お前この家はどうする気だ?」
「一年空
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