case.5 「夕陽に還る記憶」
Y 3.8.PM9:22
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
れましたが、南端の方へお嬢様の墓所が御座いました。確か…もうお二方、同姓同名のお嬢様方の墓所もあり、このお二方は朝実お嬢様の御友人で御座いました。」
「えぇ!?南側には、三人の小野朝実さんが眠っていたんですか?」
「はい。なんでも、それが遺言だとかで…教会の方がよく間違えて困ると申しておりましたのを思い出しました。生没年が違いますので、それをみて判断するのだと…。」
そうか…それでこんなことに…。だが、それだけではないような気がする…。この三人の朝実の後ろに、もっと深い闇が蠢いているんじゃないだろうか…。
「そこには朝実さんのご両親も?」
「はい。お嬢様の左に旦那様と奥様が。そして、右に旦那様の計らいで虎雄様の墓所が御座いました。真向かいに御友人方が。何だか不思議な…と言うよりも、奇妙な感じが致しましたねぇ。」
あった…深い闇…。
多分、根源は…朝実の実の父親である栗山虎雄だろう。しかしなぁ…同じ栗山でも、あの栗山一家と関係があるのか?ただ同じだけ…とは考えにくいのだが…。
「カネさん。確か…虎雄の弟が栗山の家を継いでたんじゃなかったかのぅ?全く不思議なもんじゃ。音楽好きな虎雄の娘も音楽好きになり、虎雄の弟の家系も音楽で生計をたてとるとはなぁ。」
「…!?虎雄さん…音楽を?」
どうして気付かなかったんだ…!今まで母のトミイも義父である秋吉も、共に音楽の話は出てこなかった。残っていたのは…実父しかいないのに…!
「なんじゃ、お知りにならんかったんか。虎雄は、小さなうちからピアノをやっとって、かなりの腕を持っとったんじゃよ。肺を患わなければ、有名なピアニストになっとったじゃろうて…。」
これには、田邊も美桜も驚きを隠せなかった。二人がどれだけ調べても、こんな情報は出てこなかったのだから…。
「先生…これってもしかして…。」
「考えても仕方ない…。過去になにがあったにせよ、今になって言ってもどう仕様もないじゃないか…。私達はただ、やるべきことをやるだけだ。」
俺はそう言って席を立ち、佐吉さんとカネさんに頭を下げて言った。
「お話下さって有り難う御座いました。」
「いや、大したことじゃありませんて。向こうでも何かおありの様ですし、お急ぎ下され。」
佐吉さんはそう言い、カネさんも「お気を付けてお帰り下さい。」と心配そうな表情をして言ってくれた。この件は、きっとこの二人にとっても他人事ではないのだろう。
そうして後、俺達三人は急ぎ大学へと向かったのだった。今日中に片を付けなくては、今を生きる亜沙美に何が起こるか分からない。夕方までには…決着をつけなくては…。
太陽は頭上の青空の中で光を放っていたが、俺の心は晴れることはなかった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ