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藤崎京之介怪異譚
case.5 「夕陽に還る記憶」
Y 3.8.PM9:22
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声だった。いつも冷静で慎重な真中が、誰だか確認もせずに大声をあげているのだ。背後からは怒鳴り声や叫び声も聞こえていて、これはただ事ではないと感じた。
「どうしたというんだい?」
 俺がそう問うと、真中は一旦深呼吸をしてから言った。
「ついさっき、大学の南校舎四階までの全て窓ガラスが、一気に割れたんです。その上、一階の教室の一部が陥没して、遺骨らしいものまで出てきて…。もう皆パニック状態で…。」
 俺は唖然とした。これは十中八九、この件と関連しているはずだ。だとすると…。
「佐吉さん…。以前、朝実さんの墓地があった場所ですが、現在どうなっているか分かりますか?」
「さぁてのぅ…。カネさん、聞いておるかい?」
「はい。最初は墓地の全てを更地にするはずが、三分の二だけ更地になったのですが、その後、残りも学校を建てるとかで更地にしたとか…。ですが、これさえも定かでは御座いませんし、聞いたのはもう何十年も前の話ですしねぇ…。」
 俺は真っ青になってしまった。考えてみれば、あの教会は少なくとも二回は移築しているのだ。最後に、元あった場所へ戻ってきたとしてもおかしくはない。
 元々、何か不都合があったために教会が建てられた可能性があるのだから、その土地が売れなかった可能性も高い筈だ。そうなれば、教会が再び以前あった土地へ戻ったとしても不思議じゃないだろう…。大学にしても、売りに出されている土地の一部が、まさか以前墓地だったとは考えなかっただろうしな…。
 だが…人骨が出るなんて有り得ない…。いくらなんでも土台を作る時に掘り返すんだから、その時に見付かるはずだ…。いや…工事を請け負っていた会社と例の不動産屋が密約を交わしていたら、知らないふりをして工事をしてしまう可能性だってあるか…。全く…狂気の沙汰としか言えないが…。
「先生…何かあったんですか?」
「お兄様…?」
 田邊と美桜が不安げな顔で見ている。佐吉さんもカネさんも、気付けば俺を心配そうに見ていたため、俺は電話の向こうにいる真中に返答を返した。
「真中君。直ぐそちらに出来るだけ早く帰るから、事態が悪化しないよう全員外へ避難してるように。」
「分かりました。先生、無事に帰ってきて下さいよ…。」
「縁起でもないこと言うな。じゃ、切るぞ。」
 俺はそう言って携帯を切った。
「あちらで…何かあったのかのぅ…?」
 携帯を切って直ぐ、佐吉さんが聞いてきた。
「ええ…まぁ。つかぬことをお聞きしますが、朝実さんの墓所は、教会からみてどのあたりだったか覚えてますか?」
「どうじゃったか…わしは一度行ったきりじゃからのぅ…。カネさん、覚えとるかい?」
 佐吉さんがカネに問うと、カネさんは思い出そうと奮闘し、暫くしてハッとしたように答えた。
「南側です。当時は広い敷地に多くの方が眠っておら
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