第二十話
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ってますよ」
分かり切ったこと言わないでよ。
「どうしても一緒に寝たいのなら、拒否はしないわよ。……でもなにもしないこと」
と、ドアを閉めようとする俺にからかうように言う。
「はいはい」
俺はユニットバスの扉を閉めた。
王女が入った後なので部屋中に水がぶちまかれている。
「あーあ、ひでぇなあ」
ぼやきながらタオルで曇った鏡を拭き取った。
「げ……」
鏡に映った自分を見て驚かされる。髪の毛はべとべとになっているし、あちこちにシミのような痕がついている。こするとボロボロと落ちていく。
血が乾いたんだろうか?
まあそんなこと、普段なら驚きまくりなんだけど、今日に限ってはハッキリ言ってどうでもいいこと。
一番驚いたのは、如月にほじくり出されて再生した左眼だよ。
なんか、ありえないんだけど、その瞳の虹彩の色がブルーになっていたんだ。その色は人間のものとは思えないくらいハッキリとした青だった。
まるで王女の瞳の色と同じなんだ。
右目は濃褐色で普通の日本人なんだけど、左眼がブルーになっちゃったらまるで虹彩異色症だよな。
これは、あきらかに目立つぜ。……格好いいけど。
でも、王女はともかく、十さんや亜須葉はその事について何も言わなかったんだろう……。こんな瞳をしてたら嫌でも気がつくはずだよ。
そう考えてすぐに気付いた。
ああ、そういやずっと暗闇だったもんな。
彼らと会ったのは闇夜の下だし、車の中だって暗かった。おまけに俺は店には行かなかった。だから、亜須葉たちは明るいところで俺を見ちゃいないもんな。それじゃあ良くは解らなくて当たり前かな。
とりあえずは明日は眼帯でもしていかないと目立ち過ぎる。
あとでカラーコンタクトでも買って誤魔化そう。そうすりゃいいや。
問題が解決? したから俺はさっさとシャワーを浴びる。
暖かいお湯が全身の疲れを落とすようだ。
排水溝へと流れ込んでいく水は真っ赤になっていて、俺を再び驚かせる。おびただしいほどの出血をしたから仕方ないか。
制服や靴を洗ったら凄いことになりそうだ。
石けんでごしごし洗い、シャンプーをしてやっと人心地。
風呂を出ると、冷蔵庫からお茶を取り出し、一気に飲み干す。
「さて寝るかな」
俺は部屋のドアを開けた。
すでに部屋は真っ暗になっていて、ベッドで王女が寝ているのが見えた。
暗闇でも見えるのは幻覚じゃなく俺の体の機能としては当たり前になったようだ。
押し入れから毛布を取り出し、それを頭から被ると目を閉じた。
今日はいろんな事がありすぎた。
あまりに多くの事があったせいでなかなか寝付けない。どうも体が興奮状態になったままで静まることがないようだ。
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