16部分:第十六章
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第十六章
「そして。血」
「外傷がないとすれば」
沙耶香も遺体に目をやった。
「毒、かしら」
「おそらくはそうですね」
速水もそれに頷く。答えは自然と導かれていた。
「これね」
「ええ」
二人は白ワインに目をやった。
「これで殺されたと」
「見るのがいいですね」
「あの」
メイドはそんな二人の言葉を聞いて恐る恐る声をかけてきた。
「私が。疑われてるんでしょうか」
「貴女が?」
沙耶香はふとそのメイドを見た。その瞬間その黒い目が赤く変わった。その赤い目で彼女はこのメイドの心の中を覗いてみた。これもまた黒魔術の一つであった。
「いえ、違うわ」
術はすんなりと通った。彼女にはそうした霊感等はないせいで上手く心を読むことができた。彼女は殺意なぞは持ってはいなかった。ただ自分が犯人にされるのではという怯えがあっただけであった。彼女が犯人ではないことはすぐにわかった。
「貴女ではないわね」
「はい」
その言葉に必死に頷く。これだけでよくわかった。
「私はそんなことは」
「わかってるわ」
沙耶香はそれに応えて頷く。
「貴女ではないのはね」
「わかってくれますか?」
「ええ。ただ」
沙耶香は別のものを見ていた。
「これには謎があるわね」
ワインを見据えていた。白ワインを。見ればその中に何かが浮かんでいた。
「!?あれは」
「花びらですね」
速水もそれに気付いた。
「薄いのでよくわかりませんでしたが」
「ええ。何かしら」
二人はテーブルに近付く。そして花びらを見た。
「これは」
それは薔薇の花びらであった。黄色の薔薇の。その色の為ワインの中で目立たなかったのだ。白ワインの色の中に隠れて。だが今二人はその花びらを確かに見ていた。
赤い薔薇の次は黄色の薔薇であった。そしてまたしても犠牲者が現われた。死因は二人によってすぐに調べられた。やはり毒殺であった。何処に毒があったのかも二人は調べていた。
「やはり思った通りでした」
二人は調査が終わった後で沙耶香の部屋に集まっていた。そこで速水が彼女に語っていた。
「毒はあの花びらに含まれていました」
「やっぱりね」
沙耶香はそれを聞いて頷く。
「遅効性の猛毒でした」
「遅効性」
「はい。僅かでも口に含めばそこからゆっくりと死に至る。眠るようにね」
「そしてああいうふうに死ぬのね」
「そうです。痛みも苦しみも感じずに」
「わかったわ。だからああして」
「そうです。死亡時間は」
「死後二時間っていったところだったわ。夜の間に死んだのね」
「そうですか。では間違いないですね」
「ええ。薔薇の毒でね」
二人はここまでわかった。
「肝心なところはわからないわね」
「カードにも反応はなしです」
「
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