15部分:第十五章
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第十五章
その後風呂場に入り、シャトーを飲み干して寝た。目覚めた時は朝だった。目覚めた沙耶香が聞いた話は第二の犠牲者の報であった。
「二人目ね」
その話を速水から聞いた沙耶香は微かに目を動かした。二人は今現場に向かっていた。
「被害者は誰かしら」
「御付の方です」
「あの方のね」
「はい。御付といってもよく言われるような人ではなく」
ここで若い愛人をさしていた。
「単なる使用人に過ぎなかったそうです」
「そうなの。面白くないわね」
それは沙耶香の望んだ答えではなかった。彼女はそうしたよく言われるような話を期待していたのだ。
「そんなことじゃ」
「それと捜査は別の筈ですが」
速水が不平を口にする彼女を嗜めた。
「話にはね、何でも色気が必要なのよ」
だがそれではいそうですかと聞き入れる沙耶香ではなかった。そう言い返してきた。
「まああの方は。昔からそんなことはなかったようだけれど」
「貴女と違いますからね」
「また言ってくれるわね」
「昨夜もまた遊ばれたのでしょう?」
「わかるの?」
「ええ。香水の香りが二つしますので」
「おかしいわね。お風呂は入ったのに」
「香水というのは。また特別ですから」
速水は述べた。
「身を清めても残るものなのですよ」
「難儀なものね、また」
「貴女の香りはまた。特徴がありますから」
「私が纏う香水は一つだけよ」
沙耶香は笑ってこう述べる。
「それは?」
「シャネルだけなの。知っていたかしら」
「それはまた初耳ですね」
「香水のことも知らないと女の子にはもてないわよ」
「オーデコロンにはそれなりに詳しいつもりですが」
「それだけではね。駄目よ」
「ではシャネルを勉強させてもらうとしましょう」
速水は笑ってそう言葉を返した。
「貴女がつけているなら」
香水の話をしているうちに事件のあった部屋に着いた。そこはその女性の個室であった。見れば今沙耶香達のいる部屋と全く同じ造りの部屋だった。そのベッドの中で全裸になって死んでいた。
「全裸?」
「被害者は全裸で寝る人だったそうです」
「そうなの」
速水の話を聞いて納得した。
「私も時々そうするから。わかるわ」
「身に纏うのはシャネルだけ、ですか」
「そういう時もあるわね」
話が少し先に戻っていた。だが今は二人の顔は決して軽いものではなかった。
「けれど。この人は違ったみたいね」
「ええ」
「グラスに。これは」
「白ワインです」
部屋に控えていたメイドの一人が答えた。沙耶香が抱いたメイドとは違う女の子であった。その娘と歳は大体同じのようであるが背がそれよりも低かったのだ。
「私が昨夜運んだのですが」
「貴女が?」
「はい」
沙耶香の言葉にこくりと頷いた
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