トワノクウ
最終夜 永遠の空(四)
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に堕ちた。
がしゃどくろに呑まれる寸前に横目で見た者たち――露草や梵天、菖蒲、陰陽寮の人々、それに民衆も、妖も、皆一様に声を呑まされ、驚いていた。少しだけ申し訳ない気分になった。少しだけ。
ただ一人、朽葉だけは、悲しみを湛えた瞳をしていた。
「ひにゃああああああああああああ!?」
くうは鴇時を抱えたまま、タールのような感触の渦を抜けて墜落した。墜落の衝撃で色とりどりのひらひらが散った。
そこは美しい緑の草の連なる豊かな土地であり、花の咲き乱れる草原はまるで庭園のようであった。花々は馥郁と香っている。きっと季節は夏だ。肌が風によって爽やかさを感じている。
「いたた……あ! 鴇先生!? ご無事ですか!?」
くう自身は鳳なので自動回復するが、鴇時はそうもいかない。
慌てて辺りを見回し、少し離れたところに転がる鴇時を発見した。
「鴇先生っ!」
駆け寄って、かたわらにしゃがみ込む。
朽葉たちの恩人、父と母の大事な友人に怪我をさせでもしたら。
慄然としたくうは両手の平を、大の字に寝そべる鴇時の胸に押し当てた。鳳の再生力を注ぎ込もうとした時だった。
「大丈夫だよ」
くうの手を、そっと、鴇時が取った。
「これでも帝天だから、怪我なんてしないよ。慌てないで深呼吸。それから相手の状態をちゃんと観察する。大事なことだよ」
「ご、ごめんなさいっ」
彼岸の鴇時にも同じことを言われたのに、くうは慌てて混乱してしまった。
言われた通りに大きく深呼吸してから、辺りを見回した。
真っ先に浮かんだのは、なぜ花畑なのかという疑問だった。
がしゃどくろは「帝天が救わなかった者たち」で構成されているはずだ。情緒ある生き物の群生体の鬱屈の渦に呑まれたのならば、もっとどろどろとした情景でもおかしくないのに。
「ここは、がしゃどくろの根底にある想いの場所なんだ。情念といってもいい」
「情念」
「幸せな人生への執着や渇望が、この花畑なんだと思う。ここはだから、がしゃどくろの元になった人々の、人生における勝利を象徴する場なんだ」
鴇時が差し出した両手にくうも両手を重ね、握り合う。鴇時に引っ張られて立ち上がった。
「ここでならしばらくは話ができる。明ちゃんが設計した空間だからね。その辺はあの子も抜かりないや。質問や疑問があるなら答えてあげるよ」
オッドアイが柔らかく細められた。手がほどけたので、くうは即座に手をぴしっと挙げた。
「はい、質問です、鴇先生」
「はい、くうちゃん」
「鴇先生はどういういきさつで帝天になったんですか?」
「どうして、って聞かないんだね」
「そこは分かりきってますから。朽葉さんが好きだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ