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トワノクウ
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最終夜 永遠の空(四)
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に堕ちた。

 がしゃどくろに呑まれる寸前に横目で見た者たち――露草や梵天、菖蒲、陰陽寮の人々、それに民衆も、妖も、皆一様に声を呑まされ、驚いていた。少しだけ申し訳ない気分になった。少しだけ。

 ただ一人、朽葉だけは、悲しみを湛えた瞳をしていた。







「ひにゃああああああああああああ!?」

 くうは鴇時を抱えたまま、タールのような感触の渦を抜けて墜落した。墜落の衝撃で色とりどりのひらひらが散った。

 そこは美しい緑の草の連なる豊かな土地であり、花の咲き乱れる草原はまるで庭園のようであった。花々は馥郁と香っている。きっと季節は夏だ。肌が風によって爽やかさを感じている。

「いたた……あ! 鴇先生!? ご無事ですか!?」

 くう自身は鳳なので自動回復するが、鴇時はそうもいかない。
 慌てて辺りを見回し、少し離れたところに転がる鴇時を発見した。

「鴇先生っ!」

 駆け寄って、かたわらにしゃがみ込む。

 朽葉たちの恩人、父と母の大事な友人に怪我をさせでもしたら。
 慄然としたくうは両手の平を、大の字に寝そべる鴇時の胸に押し当てた。鳳の再生力を注ぎ込もうとした時だった。

「大丈夫だよ」

 くうの手を、そっと、鴇時が取った。

「これでも帝天だから、怪我なんてしないよ。慌てないで深呼吸。それから相手の状態をちゃんと観察する。大事なことだよ」
「ご、ごめんなさいっ」

 彼岸の鴇時にも同じことを言われたのに、くうは慌てて混乱してしまった。

 言われた通りに大きく深呼吸してから、辺りを見回した。

 真っ先に浮かんだのは、なぜ花畑なのかという疑問だった。

 がしゃどくろは「帝天が救わなかった者たち」で構成されているはずだ。情緒ある生き物の群生体の鬱屈の渦に呑まれたのならば、もっとどろどろとした情景でもおかしくないのに。

「ここは、がしゃどくろの根底にある想いの場所なんだ。情念といってもいい」
「情念」
「幸せな人生への執着や渇望が、この花畑なんだと思う。ここはだから、がしゃどくろの元になった人々の、人生における勝利を象徴する場なんだ」

 鴇時が差し出した両手にくうも両手を重ね、握り合う。鴇時に引っ張られて立ち上がった。

「ここでならしばらくは話ができる。明ちゃんが設計した空間だからね。その辺はあの子も抜かりないや。質問や疑問があるなら答えてあげるよ」

 オッドアイが柔らかく細められた。手がほどけたので、くうは即座に手をぴしっと挙げた。

「はい、質問です、鴇先生」
「はい、くうちゃん」
「鴇先生はどういういきさつで帝天になったんですか?」
「どうして、って聞かないんだね」
「そこは分かりきってますから。朽葉さんが好きだ
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