トワノクウ
最終夜 永遠の空(二)
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た気分だった。
それは露草も同じようで、興奮した獣のように瞳孔が細まり、確かな殺気を放っていた。
そして、それらの事実より、何より。
「今度はやり合わねえ理由はねえ――」
「――だよな……っ」
まるで積年の宿敵同士のようだ、と思い、元からそうだったと思い出した。自分たちは本来、殺し合うのが正しい在り方。
黒鳶は人で、露草は妖。
人と妖は交わることのない、争い合うもの。
彼らは同時に苦無を、錫杖を、互いに向けて突き出した。
だが、それらの刃が、彼らを裂くことはなかった。
くうが上から黒鳶と露草の間に割り込み、苦無と錫杖を、素手で握って止めていたのだ。
「っ、離せよ」
「離しません。離したらお二人、殺し合うじゃないですか」
「ったりめえだろ。こいつぁ妖だ。妖を殺すのが俺ら妖祓いの仕事だ」
「言われなくてもちゃんと分かってます。知ってます。人と妖は仲良くできないってこと」
苦無を握った白い手から、どくどくと血が流れては落ちてゆく。空恐ろしくなる勢いの出血なのに、裏腹にくうの表情は穏やかだ。
「その理由だって知っています。くうは二度、友達に殺されてますから。薫ちゃんと潤君は人で、くうは妖だったからです」
弟子のしでかしたことも言われ、黒鳶は言葉に詰まった。
――過去を忘却してまっさらだった弟子に「妖は敵」、「妖を退治するのが全て」と刷り込んだのは黒鳶だ。
彼女はその通りに行動して、同郷の友を殺した。
弟子に、自らの命を投げ出すほどに愛していた親友を、殺させた。
何もかもを踏みにじって許される不文律の、はずだった。
「確かに上手いこと折り合いつけて助け合ったり想い合ったりしてる人と妖もいます。でもくうには、くうと薫ちゃんと潤君にはできなかった。くう達の絆はその程度≠ナしかなかった。そんな当たり前のことで終わった」
ほんの一瞬だけの寂しさが、すぐに穏やかさに塗り潰される。
「だとしても、その程度≠カゃないものもちゃんとあるんです。くうが傷ついた数以上に、結ばれたものも見て来たんです」
先にくうから武器を取り返したのは、露草のほうだった。
露草が錫杖を投げた。黒鳶はそれを、己を狙ったものだと思い、身を庇う姿勢を取った。
そうではなかった。
投げ放たれた錫杖は黒鳶の真上、曼珠沙華の骨の手に突き刺さった。骨の手が砕け、骨粉が散った。
助けられたと分からない黒鳶ではない。
「前の時はお前のほうが先に頭冷やしてたな」
――六年前。夜行
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