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トワノクウ
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最終夜 永遠の空(一)
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ら降りると、まず萱草に詰め寄った。

「何故こんなに近くまで来た! 様子を窺うだけなら池の外からでもできるだろう。それも陰陽寮の主だった者全員でなど」
「全員で来ないと何かあった時に攻勢にせよ守勢にせよ転じにくい部分が出る。それに佐々木様と紅は残っている」
「当然だ! ……もうっ」
「まあまあ朽葉さん、そう怒らないであげてくださいな」

 朽葉を諌めたのは番傘の男だった。

「一応これは佐々木様のご命令を受けて、我々で最善と判断した面子なんです」
「藍鼠……しかし」
「藍さんの言う通りですよー。心配してくださるのは嬉しいですが、我々も仕事ですから」

 黒鳶にまで助勢されて、朽葉はむっつりと黙った。

 さすがにこうなって空気が読めないくうではない。空気を変えるべく声を上げた。

「あれって、がしゃどくろって妖怪ですよね? がしゃどくろって創作妖怪じゃないんですか?」

 しかも現代における創作妖怪だ。民俗学の大御所、柳田國男の著書にさえ言及がない。

「世間に流布しているがしゃどくろは確かに海千山千だが、これ自体は実在する妖だ」

 解説を引き取ったのは老女だった。

「山東京伝『()()()(やす)(かた)(ちゅう)()(でん)』にて滝夜叉姫が妖術で呼び出したのがこんな感じだの。もっとも原作では骸骨の群れを呼び出すところを、歌川国芳は『相馬の古内裏』にて巨大な一体の骸骨で表現した。そういう意味では創作と言うても間違いではないが」
「ですよね……あっ」

 花園稲荷神社の鳥居から飛び出して来た巫女の集団。通行証で、坂守神社から最寄りのあの神社の鳥居へ道を繋げたのだろう。
 率いているのは、戦巫女たちよりはいくらか瀟洒な装束の巫女だった。
 
「朽葉さん、ちょっとごめんなさい!」

 くうは再び翼を広げて、巫女勢のほうへ翔けた。


 巫女たちの何人かが気づいてくうへ矢を射ようとしたが、それは新しい〈銀朱〉――菖蒲が止めてくれたので、くうはすぐさま菖蒲の前に降り立った。

「菖蒲先生っ」
「くうさん。貴女もやはり来てましたか」
「はい。朽葉さんと一緒に。――あの妖、何なんですか? がしゃどくろは創作妖怪って陰陽寮の人達も言ってたのに」
「ここは人の心が妖を生む世界です。あれが何の念に由来するものかは分かりませんが、元となる負の念が膨大になれば、あのような大妖になることも、ないとは言い切れません」
「妖、で、いいんです、よね?」

 妖の生まれるカラクリを知る菖蒲相手だから、言えた。

「なんかこう、無機質な感じっていうか。ただの骨格標本みたいで」
「だーいせーかーい!」

 はっと、がしゃどくろの頭の上に座っている明を見上
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