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歌集「春雪花」
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 夏宵の

  浮くや浮き世の

   想い差す

 君ぞ恋しき

    夜半の月かな



 夏の夜は皆、昼の暑さを忘れて心軽く…楽しく過ごす者もあるだろう。
 淡い月明かりが照らす世界は、そんな者達には美しく見えることだろう…。

 しかし、彼のいないこの空の下…私には寂しいだけの光景が広がるばかりだ…。

 この月は…彼への恋しさを募らせるばかり…。



 吹く風は

  涼風なりし

   暗闇の

 心同じく

    光りなきにし



 窓から入る風が涼しく、夏も半ばに入ったことを知らせている…。
 外を見れば月影もなく、雲が広がっていることを物語っていた…。

 そんな暗闇を見ていると、私の心も同じなのではないのか…と、思ってしまう。
 月の光の差さない夜…彼がいなく寂しいと感じる心…何が違うと云うのだろうか?

 私を取り巻くのは…深い闇ばかり…。




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