11部分:第十一章
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わ」
それでも沙耶香は負けてはいなかった。チェスで負けはしても。
「魔術は違うわよ」
「では私の占術も」
「お互い。見せてもらうことになりそうね」
「ええ」
「それを。楽しみにしてるわ」
二人は席を立つとロビーを後にした。それから新たな術で捜査にあたる。結局この日はこれといった情報は手に入らなかった。手に入ったのはシスターの胸を貫いていた薔薇のことだけであった。
「あの薔薇はこの屋敷の薔薇でしたね」
「赤薔薇ね」
「はい、紛れもなくあれでした」
二人は今度は速水の部屋で向かい合ってテーブルに座っていた。そこで紅いティーを飲んでいる。中は沙耶香の部屋と変わりがない。同じ配色に同じアクセサリーの部屋であった。
「庭の赤薔薇。それから察するに犯人は」
「どう考えても。この屋敷の人間ね」
「ええ。そういえばあの方は今日はおられませんでしたね」
「何でも何か用事があったそうよ」
「そうだったのですか」
「野島さんもね、一緒に」
「ではあの二人は犯人ではない」
「疑ってるの?二人を」
「申し上げた筈です、犯人はこの館の者しか有り得ないと」
速水の右目が強く光った。
「それからしますと当然だと思いますが」
「厳しいわね」
沙耶香はそれを聞いてまた口の端を微かに歪めた。
「まるで探偵みたいね」
「私は探偵には向いていないと自分では思っていますが」
「そうかしら」
「ただ、少なくとも御二人である可能性は消えました」
「それにあの神父さんも覗いてね」
「はい」
「それだと妖しいのは」
「まずこの家の従医さんに看護婦さんが二人」
「そしてメイドの女の子が七人」
「あの方の御付の女性に」
「それだけだったかしら」
「シェフが三人おられましたね」
「それと庭師ね」
「ええ、それだけです」
「神父さんを入れて十六人」
「これだけです」
「こうして考えると女の人が多いわね」
沙耶香はあらためて言った。
「十六人のうち十人なんて」
「いえ、十一人ですよ」
だが速水はそれを訂正してきた。
「そうだったの?」
「シェフの方です。御一人は女性ですよ」
「あら」
それは言われてようやく気付いた。ファイルの写真からはとてもそんなことは感じられなかったのだ。
「そうだったの」
「ええ。シェフといいましてもソムリエですが」
「ソムリエ」
ワイン担当である。どの料理にどのワインが合うか、それをチェックし、客に伝えるのが仕事である。西洋の料理には欠かせない存在である。
「女性のソムリエなのですよ」
「そうだったの」
「資料をもう一度御覧になられますか?」
「ええ。誰だったかしら」
「こちらです」
速水はすぐに資料を出してきた。隠れている左半分の顔を左手に向けるとそこにフ
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