くろすつぇるさんのためいき
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、わしゃわしゃと髪を乱して離れた。
「良い旅をー!」
馬車へ戻って手を振るアーレストに、小さく手を振り返し。
再び、ベゼドラと一緒に歩き出す。
突然の再会に驚かされた一幕だったが……。
自分を育ててくれた国に居れば、こういうこともたまにはあるだろう。
できれば、教会関係の顔見知りとは、あまり会いたくないのだけど。
「アーレストに何を言われたのですか? ベゼドラ」
うつむいたままのベゼドラに目を向けると。
彼はギリッと歯を食いしばり、悔しそうに拳を握った。
…………?
悔しそう?
「あの野郎……。人間のクセに、俺が悪魔だと一目で見抜きやがった」
え?
「まさか。悪魔の存在なんて神代の寓話程度にしか伝わっていませんよ? 私も、貴方以前に会った経験はありませんし」
悪魔だけではない。
女神アリアだって、大半の信徒は象徴の扱いだ。
教えを形にした偶像の域を出ず、本当に存在しているとは思ってもいない様子だった。
この現代で、ほぼ空想上の生物を見抜いた?
アーレストが?
「少しでもお前に危害を加える気配があればここで祓うつもりだったが、今回は見逃してやる。お前を命懸けで護れ、だとよ」
「それで不機嫌なのですか? 非力な筈の人間に、正体を見破られたから」
「アイツ、お前以上に気持ち悪いっ!!」
「あ、はい。理解しました。聴いたんですね? 地声」
見かけは細い線の、場合によっては美しい女性に見えるアーレストだが。
彼は歴とした男性だ。
それはベゼドラも気付いただろうが。
まさか、声色を自在に操れる声帯の持ち主だとは思わなかったのだろう。
アーレストの声音は、人間の域を超えている。
同性から異性の声はもちろん。
動物の声や虫の聲、風の音や水流音まで、完璧に再現できてしまうのだ。
そんな彼の地声は、とっっても低い。
耳元で十秒間「あー」と言われるだけでも脳震盪を起こしそうなくらい、とんでもなく低い。
あの美しい顔で睨まれつつ、ドスが効いた声で脅されれば。
さすがの悪魔ベゼドラでも、怯えてしまうかも知れない。
「なんなの、お前ら。おかしいだろ、アリア信徒」
「私までひとまとめに評価しないでください。彼は特別なんです」
自分はあんな特技、持っていない。
「第一、貴方だって私の声を真似していたでしょう。教会で」
「悪魔の声と人間の声を一緒にすんな!」
それはそうだが。
悪魔にまで異常と言われるとは。
あらゆる意味で凄いな、アーレスト。
「男同士でベタベタと気持ち悪ぃし!」
「あれは私も理解不能です」
子供
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ