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黒魔術師松本沙耶香  薔薇篇
10部分:第十章
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で述べた。
「あの人は関係ないわね」
「そうとしか感じられません。犯人は別にいます」
「じゃあ誰が」
「残念なことに。それはまだわかりませんね」
 速水はそう言って残念そうに首を横に振った。
「一体誰なのか。しかし誰であろうとも」
「相手は。相当悪趣味なようね」
「薔薇に十字架ですか」
「それに棘。演出家のつもりかしら」
「そうした死を。芸術だと考えている輩なのかも知れません」
「ぞっとするわね。どうもそうしたのには会う機会が多いけれど」
「それは私もですよ」
 二人は庭を進みながら話していた。その左右には薔薇が咲き誇り、香りが辺りを支配していた。二人はその中を進んでいたのである。
「何故かね。これも縁でしょうか」
「厄介な縁ね」
「私としては貴女との縁があればそれでいいのですが」
「それはないかもね」
「おやおや、つれないことです」
「諦めたら?私は一人の女の子にも殿方にも満足しないわよ」
「限られた魅力の持ち主にだけ許される御言葉ですね」
 だが速水はそう言われても相変わらずであった。
「だからこそ。私も」
「好きにすればいいわ。そうしたらそのうち私の気も変わるかも」
「それをお待ちしていますよ」
「期待しないでね。さて、手懸かりは何もなかったけれど」
「ないならないで探すまでです」
「そうね。それじゃあ私も」
 沙耶香の影が動いた。そのまま何処かへと消えていく。
「はじめるわ。貴方もね」
「はい」
 速水はこくりと頷いた。手を掲げるとそこにタロットのカードが姿を現わす。それを投げると一斉に何処かへと飛んで行った。カード達はそのまま姿を消した。



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