第十八話
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「柊様、お待たせしました」
十さんからの電話だった。
すぐ側まで来ているそうで、詳細な場所を教えてくれとのことだった。
俺は公園の場所を伝えた。
俺の親父、……最近は会ってないけど、は学園都市の建築にもだいぶ関わっているようで、そのせいか、ある程度の地位・権力が行使できるようなんだ。だから通行規制や立ち入り規制のあるエリアでも自由に出入りできる。当然、彼の車も自由に出入りできる許可を得ている。だからこんな時間にもセキュリティなど関係なく入ってこれるんだ。
数分のうちにまっ白い4ドアセダンが現れた。
遠目にもその車が高級車であることがわかる。
俺の親父の趣味が色濃くでている車。
……メルセデスベンツだ。
それもノーマルじゃない。
やたらとでかい6本スポークのホイールを履かせていて、タイヤの厚さはかなり薄い。
ブラバスとかいったように思う。
エンジンが低く唸っている。
ライトがスモールになり運転席のドアが開く。
背の高い人間が現れる。
「柊様……お待たせしました」
俺の姿を見て一瞬だけ動揺したような顔をしたが、すぐに平静を取り戻した態度になる。
素肌に学生服を着て、ズボンの右脚が千切れていてそれがずり落ちないように手で引っ張り上げている姿はとても異様で滑稽に見えただろうに。
そして彼には俺が全身血まみれだということは、すでにばれているみたいだ。
十さんはグレーのスーツを着こなし、髪を短く切りそろえ、おまけに顔はちょっと厳つい。目つきだって人を射るような感じなんだ。何も知らない人がみたらヤクザにしか見えない。特に凶暴な態度や威圧的な雰囲気なんてちっとも漂わさないけど、常にピンと張り詰めた何かを感じさせる人だった。
まあ俺や妹の亜須葉にはとても優しい兄貴みたいなもんだったけど。
「十さん、スミマセン。こんな夜中に来てもらって……。見てわかると思うけど、まあこんな状態なんだ」
「はあ。電話の感じからまさかとは思いましたが、これほどの状態とは……。しまったな」
なんだか申し訳なさそうに彼が言う。
俺を見、隣に立っている王女を見、なにか不審気な顔をしたと思ったらまた困ったような顔をした。
「十さん? どうかしたの」
「いやその。……柊様、申し訳ありません」
そう言って彼は車の方に目をやる。
ガチャリ。
突然、車の後部座席の扉が開いた。
そしてそこには一人の少女が降り立つ。
あ……。
そこには、少しつり上がり気味の大きな瞳をした、長い真っ黒な髪の少女が立っていた。
「にいさん! ……どうしたんですか。どうしてそんなことに」
俺が何かを言い返そうとする間も与えず、俺の側に駆け寄って来る。
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