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異界の王女と人狼の騎士
第十八話
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 妹の亜須葉(あすは)だ。

 なんてこった。こんな時によりによってこいつが来るなんて……。
 俺は恨めしそうな目で十さんを見る。

「すみません。亜須葉様に見つかってしまって、何かあったのかと聞かれ、誤魔化そうと思ったのですがそれもうまく行かず……。話を聞くとどうしても連れて行けというもんですから……。まさか柊様がこんな状態だとは思わなかったもので、つい」
 頭をかきながらすまなそうな顔をするけど、ちっとも反省しているようには見えないのは気のせいか?

 亜須葉は泣きそうな顔で俺の顔を見上げる。瞳は涙で潤んでいる。


 一年ぶりくらいかな? こいつとまともに顔を合わせるのは。ちょっと見ない間にまた色っぽくなっちゃったなあ……と思ってしまう。まだ中学生なのに大人びた顔をしているからなあ。

 感慨深げにしている俺に構わず、亜須葉は俺の体を叩いたり触ったり撫でたりしている。
「にいさん、大丈夫なの? こんなに服がボロボロになって……、これ血じゃないんですか? 怪我をしたんですか? すぐに病院に行かなくっちゃ。十、お願い!! 」
 腕を取ると無理矢理車に押し込もうとする。

「あ、亜須葉。うん、俺は大丈夫だよ。全然平気だから」
 本当に大丈夫なんだけど、常識的には全然そうは見えない感じなんだろうな、うん。そんなことを考える。
「ほら、全然痛くもないし、血も出ていないよ」
 そういって俺は手を振ったり、腕をグルグルと回してみたり、体を揺すったりしてみせる。

「でも、何でこんなにボロボロになってるの? 何をしたらこんな格好になるというんですか? こんなの、誰かに暴力を振るわれたりしないとならないはずです。一体、誰が? まさか……、にいさん、学校で誰かに虐められているんですか」
 妹の瞳からは涙がこぼれ落ち始めている。
「わたし、ずっとにいさんの事が心配だったの。家を飛び出して行ってから、ずっと連絡もくれないんだもの。……お願い、本当の事を言ってください。もし学校で虐められたりしているんなら、わたしにだけは話してください」

「いや、そんなことなんてないよ。これはちょっとした事故みたいなもんで……」

「にいさん。わたしにだけは隠し事はしないで。真夜中にこんな格好でいるなんて普通あり得ないわ。一体どうなっているというんですか」
 真剣な目で俺を見る亜須葉。本当にマジな目だ。本気で俺の身を案じてくれているんだから嬉しいことではあるんだけれど。

 やばいなあ。こまったなあ。

「もし俺が誰かに虐められてたらどうするんだ? 」

「もちろん、ただではすませません。十に命じてそれ相応の償いをしてもらいます。そうよね、十? 」

「亜須葉様のご命令とあらば」
 十さんは、ごくごくあっさりと言う
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