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藤崎京之介怪異譚
case.5 「夕陽に還る記憶」
U 2.26.AM10:47
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 俯いたままそう呟いたと思った刹那、凄い形相で俺へと顔を上げ、立ち上がって捲し立てた。
「皆死ねばいい!私だけ死ぬなんて耐えられないわ!音も光も無い中で、何故私一人で過さねばならなかったの!?あんな箱に死ぬために閉じ込められて、誰も私を顧みもしないなんて!そうよ…皆…皆死ねばいいのよ!!」
 そう叫んだと思うと、亜沙美嬢は口から泡を噴いて倒れてしまったのだった…。
 あまりの出来事に夫妻も氷付いていたが、直ぐに我に返って倒れた娘を慌てて寝室へと運んだのだった。
「誠に申し訳ありません…。」
 亜沙美嬢を寝室へ運んで暫くして、困惑の度合いを強めた表情で夫妻は応接室の扉から入ってきた。
「このままでは娘が…亜沙美がどうかしてしまいます…。藤崎先生…お願い致します。娘を救ってやって下さい…。」
 夫妻の言葉も態度も丁寧だが、そこから娘を思う必死の叫びが聞こえてくるようだった。
 しかし…このまま安請け合いしても良いものだろうか?だが、目の前で頭を下げたままじっと待っている夫妻に、断るとは到底言えるものではなかった…。
「分かりました。ですから、どうか頭を上げて下さい。ですが、私にも今すぐどうこうしてくれと言われても、まだ手の打ちようがないのです。なので、少しだけ調査する時間を下さい。手掛かりさえ掴めれば、きっと解決策も見付かる筈です。」
「藤崎先生…。ありがとうございます…本当に…ありがとうございます…。」
 かくして、俺は再び霊絡みの事件へと巻き込まれることになったのだった。



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