case.5 「夕陽に還る記憶」
U 2.26.AM10:47
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の記憶を子孫に投影していたんですよ。」
「投影…ですか?」
今まで黙していた明臣氏が不思議そうに言った。まぁ、いきなりそう言われても、大方の人は理解できないだろうが…。
「そうです。また、霊は他人の記憶や癖など、様々なものを複写することが出来ると私は考えてます。その結果、生まれ変わりがあると信じさせているのだと私は思っているんですよ。」
俺がそこまで言うと、前の三人は困惑した表情を浮かべていたが、再び明臣氏が俺に言った。
「だとしても…娘は何の関係もないのではないのかい?今の様になったのも、何の前触れもなく突然だったからねぇ…。」
「理由なんてないんですよ…。ですが、お嬢さんは知らず知らずのうちに何かに触れたか、または関連する場所へ行ったかして、霊にとっては都合が良いものと判断された可能性は高いと思われます。その場合、お嬢さんを霊から解放するのには、かなり厄介だと言わねばなりません。」
俺がそう言うと、亜沙美嬢は顔を蒼くして心配そうに問い掛けてきた。
「藤崎先生…。私、このままだと…どうなってしまうのでしょうか…?」
答えづらい質問だ。だが、本人は意を決して問ったに違いない…。俺は暫く考えた後、正直に答えることにした。
「第一に。そのまま霊に取り込まれ、自分は死者の生まれ変わりだと信じて行動するようになる。こうなった場合、多くの人を巻き込む恐れがあり、大抵は新興宗教の祖になるパターンが多い。第二に。霊の力に体が耐えられなくなり、精神を崩壊させて自分を喪う。こうなってしまってからでは、もう助けようがなく、死を待つだけだ。だが、これはまだ良い方なんだ…。」
俺はここまで言って、一旦言葉を切った。三人は次の言葉を不安げに待っているが、内心気が気じゃないだろうことは顔色から窺えた。
俺は溜め息を一つ溢して言葉を繋げたのだった。
「第三に。肉体、精神もろとも霊に飲み込まれ、操り人形にされてしまうこともあるんだ。そうなると…もはや人間とは言えない…。」
それを聞いた亜沙美嬢は、恐れのあまり失神しかけてしまい、それを早紀夫人が急いで抱え起こしたのだった。
「大丈夫!?」
「大丈夫です…お母さん。それで、先生…。お力添え頂けるのでしょうか…。」
亜沙美嬢は真剣な目をして俺を見ていた。早紀夫人も明臣氏も、藁にもすがる様な目をしていたため、正直迷った。俺は暫く、こういった事件には関わり合いたくは無かった。だが…このまま放置すれば、結果は目に見えているのだ。見捨てることなどできない…。
「どうにかしましょう。幸い、名前といつ頃の人物の記憶かは分かっていますから。だから…」
俺がここまで言った時、それまで大人しかった亜沙美嬢の様子が一変し、俺と栗山夫妻は目を見開いた。
「あら…先生。貴方様も私の邪魔を為さると言うの…?」
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