case.5 「夕陽に還る記憶」
U 2.26.AM10:47
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う言って微笑んだ。そうして後、直ぐに真顔になって彼女は言った。
「では、藤崎先生。先生をお呼びした理由をお話し致します。」
「そうだね。もしかして…昨日の事と関係あるのかい?」
亜沙美嬢の言葉にそう返すと、急に三人の雰囲気が変わった。何だか体を強張らせているようで、緊張していることは俺にでも理解出来た。
「はい…。父や母とも相談したのですが、中立な第三者に話して意見を求める方が良いかと思いまして…。」
「しかし…どうして私だったんだい?医師や…そうでなくても寺社や教会でも良かったんじゃないのかい?」
俺がそう問い掛けると、三人は顔を見合せて暫くは黙っていたが、意を決して話し始めたのは早紀夫人だった。
「先生…実は、医師にはもう見せましたの…。ですが…何も解りませんでしたわ。何十件も回ったのですけど、結局解らずじまいで…。教会の神父様にも相談したのですけれど、それでも答えは見付かりませんでしたわ…。それで…失礼ながら藤崎先生を頼ろうと…。」
この話し方から察すると、どうやら誰かが俺のことを話したんだな…。まぁ、この際それはいいか…。
「私のことは、一体誰からお聞きになったんですか?」
「実は…御厨宗一郎様からお名前を伺いましたの。」
なるほど…。御厨さんは有名な小説家で、随分前にこういった事件を依頼されたことがあった。かなり風変わりな方だが、とても世話好きな優しい方だった。
彼から聞いたってことは、やはり霊関係ってことだな。じゃあ、この一家は今起きていることを、やはり霊の仕業と考えているのだろうか?
「そうですか、御厨さんから…。それで亜沙美さんに起きていることは、霊の仕業だとお考えなんですか?」
「いえ、そうではなく…生まれ変わりなんじゃないのかと…。」
その早紀夫人の言葉に、俺は眉を潜めた。俺自身、生まれ変わりは全く信じていない。人は皆、死で一度は全てを失う。人が霊…肉体を持たないものになる筈はないのだ。第一、人間にその資質は無く、肉体そのものが魂と言える。だからこの上無く“生まれ変わり"を信じる人達は厄介なんだ…。
「申し訳ないのですが、私はそういったことを信じていません。ですので、お力添えをすることは…」
「先生。そうお言いにならず、少しで宜しいのでお考えを仰って下さい。」
さて、どう答えてみたものか…。恐らく、御厨さんは俺の考え方を、多かれ少なかれ話しているはすだ。だが…この家族がそれを受け入れるか否かは別問題で、悪くすれば亜沙美嬢を悪化させる危険性もある。
俺は暫く目を閉じて考えて後、静かに口を開いた。
「以前に一度、この様な事件を依頼されたことはありました。御厨さんはそれを知っていたため、あなた方に紹介されたのだと思います。その事件では、霊…私は悪霊または太古の霊と呼んでいますが、それが祖先
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