第ニ十二夜「アクアマリンの憂鬱」
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ロと辺りを見回した。
「あ、いたいた。」
どうやら見つかったようで、彼女はその人物のもとへと走ったのであった。
「お待たせ。結構待っちゃった?」
彼女が声をかけたのは男性である。年の頃はニ十五、六といったところか。
「俺もさっき着いたとこ。しっかし…元気だねぇ。」
声をかけられた男性は、笑いながら言った。
彼女は彼の言葉に苦笑し、それに言葉を返した。
「正直、ちょっと仕事が煮詰まっちゃってるんだけどね。たまの息抜きだもの、楽しまなきゃ損でしょ?」
彼女はそう言って、可愛げにペロッと舌を出した。
「いつものこととはいえ、漫画家も大変だよなぁ。」
男性は同じく苦笑いして返した。
どうやらこの女性、漫画家らしい。大して売れてもいないようだが…。
「じゃ、行こうか。いつもんとこだろ?」
そう彼が言うと、彼女はニコニコしながら歩き出した。
初秋の心地好い青空の下、二人は手を繋いで目的地へと向かったのであった。
一方、あのアクアマリンと言えば…。
―まったく嫌んなっちゃう!手なんか繋いでベタベタと、はしたないったらないわね!それもこんな紫外線の強い日に引っ張り出すなんて…。まさか、こんなイチャイチャを見せつけるつもりだったんじゃないでしょうねぇ…。―
そんなわけはないが、イライラ度百五十%に達してしまいそうなアクアマリンは、まるで小姑の如くブツブツと呟いている。
それでも飽き足らず、買い物に行った先々であれはイヤだのこれはオカシイだの…。このアクアマリン、一体どこの出身なのかは知らないが、やたらと煩わしい。
―全く、この娘は何様のつもりなの?この私を何だと思ってるのかしら!たまに外へと出てみれば、私を磨いてくれるでもなく…。ただ歩き回ってるだけじゃないのよ!!―
連れてきてもらっている分際で、このアクアマリンが何様なのだろうか。これでは持ち主の女性が可哀想と言うものである。
人混みに入れば臭いだの、表に出れば紫外線云々だの、仕舞いには買い物したものが似合わぬとケチをつける始末…。
本当に何様なんだか…。
☆ ☆ ☆
一日はあっと言う間に過ぎ去り、辺りを夕焼けの紅い陽射しが照らし出していた。
買い物を終えた二人は、そのまま家へと戻った。
男性は彼女を家まで送るのか、両手に大量の荷物を抱えながら一緒に歩いていた。
無論、自分で買ったものは一つもない。
「荷物…重くない?」
「大丈夫だって、このくらい平気だよ。でも、目当てのもんがあって良かったな。」
なんの苦もなく荷物を持ちながら、男性が笑って言う。
「ほんと、これなかなか売ってないのよね。今日はついてたわ!」
彼女はとても嬉しそうに言いながら、男性に笑い返した。
だが
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