暁 〜小説投稿サイト〜
トワノクウ
トワノクウ
第三十四夜 こころあてに(二)
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
っていく。

「ここまでしてくれたお前に何もさせないのは、あまりに無情というもの。お前は鴇の教え子で、紺の一人娘だからな。私に多大な恩のある二人の愛し子を無碍にはできん」

 事ここに至ってくうにできることなどあるのか。「鴇時のために何かする特権」は朽葉のもので、くうにできることはもはやなくなったに等しいのに。

「お前がもし鴇を、私達の及ばぬ方法で救うことができて、お前が心からそれを幸福だと思うなら、言ってくれ。その時は、共にあいつのために戦おう」
「いいんですか? だって、鴇先生の特別は朽葉さんなのに」
「ああ。あれが本音だぞ。だが、恋慕だけではままならないし、お前ならいいんだ。紺の娘で、鴇の教え子のお前だから、許せるんだ」

 月光を背に受けた朽葉の微笑みは、まるで菩薩。

「……じゃ、約束です」

 くうは朽葉に向けて小指を差し出した。
 意は伝わったようで、朽葉も小指を差し出した。
 彼女らは互いの小指を絡めた。

「「ゆーびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!」」

 朽葉は何とも言い難い感情を浮かべた笑顔で小指を見下ろした。

「他人と指切りするなんて、人生で初めてかもしれない。――ありがとう、くう」
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ