トワノクウ
第三十四夜 こころあてに(二)
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っていく。
「ここまでしてくれたお前に何もさせないのは、あまりに無情というもの。お前は鴇の教え子で、紺の一人娘だからな。私に多大な恩のある二人の愛し子を無碍にはできん」
事ここに至ってくうにできることなどあるのか。「鴇時のために何かする特権」は朽葉のもので、くうにできることはもはやなくなったに等しいのに。
「お前がもし鴇を、私達の及ばぬ方法で救うことができて、お前が心からそれを幸福だと思うなら、言ってくれ。その時は、共にあいつのために戦おう」
「いいんですか? だって、鴇先生の特別は朽葉さんなのに」
「ああ。あれが本音だぞ。だが、恋慕だけではままならないし、お前ならいいんだ。紺の娘で、鴇の教え子のお前だから、許せるんだ」
月光を背に受けた朽葉の微笑みは、まるで菩薩。
「……じゃ、約束です」
くうは朽葉に向けて小指を差し出した。
意は伝わったようで、朽葉も小指を差し出した。
彼女らは互いの小指を絡めた。
「「ゆーびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!」」
朽葉は何とも言い難い感情を浮かべた笑顔で小指を見下ろした。
「他人と指切りするなんて、人生で初めてかもしれない。――ありがとう、くう」
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