トワノクウ
第三十四夜 こころあてに(二)
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確かにくうはこの集まりを「お泊り会みたい」と言ったが――
まさか本当に、集まった全員が同じ小屋で布団を並べて眠るところまでやるとは、くうであっても予想だにしなかった。
(浴衣持ってきてくれって事前に言われてはいましたが、軒先で花火か夕涼みでもするんだって勝手に思ってて、まさかお風呂上りに着る用だなんて思いもしませんでした)
まずは女性陣から、ということで、くうは朽葉と芹と三人で湯殿にいた。
小さな芹は湯船の湯を跳ねて、湯船に浸かる朽葉にかけて遊んでいる。朽葉もやり返してはいるが、その顔には笑み。本気で怒っているわけではない。
体と髪を清めてたくうは、自身も湯船に足を踏み入れた。
意外と菖蒲宅の湯船は広いのだ。菖蒲は「元からこうだった」と言ってはいたが。
(知ってはいましたが、やっぱり朽葉さんってスタイルいいなあ。芹ちゃんも境遇の割に健康的な身体してますし)
くうは自身の体を見下ろし……二度と深く考えまいと決めて湯に浸かった。
「Felicit?〜」
芹が立って細い両腕を広げ、くるくると浴槽の中を回った。その弾み転んで湯の中に尻餅を突いて、それさえおかしいというように笑って、朽葉の腕に絡みついた。
「――なあ、くう。あの場では言えなかったが」
「はい?」
「お前は夜行を――お前の叔母だという奴のことを、どう思っているんだ?」
笑顔が引き攣って、固まった。
篠ノ女空が篠ノ女明をどう思っているか。
「――家族です」
「家族?」
「死体を掻き集めて、皆さんの心を傷つけて。世の中そのものを大変なことにして。その時の夜行の主導権が明おばさんになかったんだとしても、今の明おばさんは六年前と同じようなことしようとしてるかもしれない。そうなったら堂々と『酷い人』って罵ってあげるんです。でもそれまでは、家族、だと思っていたい。お父さんとお母さん以外の血の繋がった人、初めてだから」
そしてそれ≠ヘ明のほうも同じはずだ。
若くしてあまつきに閉じ込められ、今日に至るまで現実への帰還を果たせなかった明。
その明がくうを見つけた時、明はきっと感動していた。
そこまで予想できているのに、くうが明確に明を憎むのは難しい。
「お前はそう言う気がしていた」
朽葉がふわりと笑った。
「くう。もし血縁との対立が辛いのなら、無理に私達に付き合わずともよいのだぞ。此度の試練は、彼岸人に頼らず、我らあまつきの人と妖の問題として解決するのが筋だ」
それは、つまり。
本来なら篠ノ女空という異物など、朽葉たちは要らないのだと、そう言ったということではないで。
「いやです!」
くうはざぱりと湯を弾く勢いで立ち、強く両手の拳を
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